「加害者が変わらなければDV被害減らない」…更生に取り組む民間団体、公的支援なく厳しい活動 「教育の制度づくり必要」 鹿児島

 2023/03/31 11:27
DVをやめたいと希望する参加者にオンラインで講座をする佐々木浩介さん=鹿児島市
DVをやめたいと希望する参加者にオンラインで講座をする佐々木浩介さん=鹿児島市
 ドメスティックバイオレンス(DV)防止法の改正で、4月から精神的なDV被害が保護命令の対象に拡大され、罰則も強化される。被害者支援が前進する一方で、「加害者が変わらなければDV被害は減らない」と、加害者更生に取り組む団体が鹿児島市にある。公的支援などなく、課題は多い。

 臨床心理士や医師らでつくる「鹿児島Lazo(ラソ)」。DV加害者のカウンセリングをすることが多い臨床心理士・公認心理師の佐々木浩介さん(40)を中心に2016年結成。東京のNPO法人「RRP研究会」などに学び、19年から加害者教育プログラムをつくった。

 県内の40代男性はDVで妻と子どもが家を出てしまってから、家族関係を取り戻したいと加害者教育プログラムを受講した。日頃から言い争いが絶えず、携帯電話を壊したり、突き飛ばしたり。「妻が先に手を出したから。自分は暴力的な人間ではない」と考えていたという。

 受講を重ね、妻に「上下関係を求めていた。暴力をしていた」と認めるようになった。「自分と妻は考え方や見えているものが違うことに気付いた。今も離れて暮らすが、家族と会う時を穏やかに過ごせている」と振り返る。

 受講は男性のみ。半年に12回あり、県内外に受講者がいる。暴力がパートナーや子どもに及ぼす影響や、健全なコミュニケーション(聞き方・話し方)を学ぶ。延べ13人が参加した。

 「『自分を変えたい』と思っている加害者は予想以上にいる」と佐々木さん。加害者は他人に理解してもらえない寂しさや苦しさを感じ、話を聞く力、気持ちを伝える力が低いという共通点がある。

 欧米では強制的に更生プログラムを受講させる仕組みがあるが、日本は任意。主に民間が担い、多くは公的支援もない。ラソも運営のため受講料を徴収しているものの、スタッフはボランティアの状態が続く。

 佐々木さんは「深刻なDV被害を減らすため、加害者教育について制度づくりが必要だ」と訴える。