ウィズコロナ 静かな一歩 ホテルはマスクなし接客 繁華街に響く「乾杯」 公共交通など様子見続く

 2023/05/09 11:47
マスクを着けず笑顔で接客するホテルスタッフ=8日午後、鹿児島市の城山ホテル鹿児島
マスクを着けず笑顔で接客するホテルスタッフ=8日午後、鹿児島市の城山ホテル鹿児島
 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが8日、5類へと引き下げられ、コロナと共生する日常生活が始まった。鹿児島県内では、マスクやアクリル板、県の第三者認証シールを外す店がある一方、引き続き感染防止対策に努める店もあって対応はさまざま。「劇的に何かが変わる訳ではない」と冷静に受け止めつつ「笑顔が戻るきっかけになれば」と期待を寄せた。

 国内外から多くの客が訪れる鹿児島市新照院町の城山ホテル鹿児島は、3年ぶりに全従業員がマスクを外し客を迎えた。「表情もおもてなしの一つ」と狙いを話すのは得田秀範総支配人(49)。マスクなしの宿泊客も増えており、案内係の河口亜衣さん(34)は「少し気恥ずかしいけど、感情を読み取りやすくなるので表情に一層気を使い接客したい」と笑みを浮かべた。

 「乾杯」の声が響き渡り大型連休明けもにぎわう「Li-Ka(ライカ)1920」(同市中央町)のかごっまふるさと屋台村。同市の会社員宮路祐太さん(33)は「店で飲むと、おいしく感じるよね」。感染防止用のアクリル板がなくなったテーブルを囲み、友人と3人で笑顔でグラスを掲げた。

 「すしことかつお」の店頭で客の呼び込みに立つ池田杏妃さん(29)は「緩和ムードが広がり、お客さんと会話しやすくなった」と歓迎する。外国人客も増えており「翻訳アプリを導入したり団体客への対応を覚えたりとやることがたくさん。忙しくなりそう」とうれしい悲鳴を上げた。

 「抑制されていた外出意欲が戻ってきた」と話すのは、天文館地区の飲食店約700店に酒類を卸す「オーリック天文館店」(同市山之口町)営業担当の西村翔さん(32)。最近の週末や大型連休中はひっきりなしに注文が入り、4月の売り上げはコロナ前に戻った。注文増加を見込んで従業員を5人ほど補充予定だ。

 コロナ下で入浴中の会話自粛を呼びかける「黙浴」ポスターが目立った温泉施設。同市田上6丁目の「鹿児島温泉時之栖」は、ポスターを10枚から2枚に減らしイベント告知に張り替えた。田場学店長(55)は「人が集い語らう憩いの場を目指したい」と話す。

 一方で、同市伊敷町の「たぬき湯」は、これまで通り利用客にもマスク着用や検温を呼び掛ける。高齢者の利用が多く、第9波を懸念する。萩原豊子専務は「ウイルスが完全に消えた訳ではない。コロナ前の対応に戻すのは1年はかかりそう」と気を引き締めた。

 公共交通機関は、運転手らのマスク着用を任意にするところが多い一方、バスやタクシーの運転席を区切るビニールシートは残すなど一部対策を続ける。着用を任意とした種子屋久高速船。8日は乗客の大半がマスクをしていたためか、同市本港新町の乗り場窓口の職員は全員着用していた。

 塩釜雄二課長(43)によると、観光客はマスクを徐々に外しているが、島民はまだ気を付けている印象という。消毒液は現在の使用分がなくなり次第撤去するものの「脱マスクはしばらく様子見。早く満面の笑みでお客さまを迎えられれば」と願った。