給食の黙食解除、運動会を復活…学校の「日常」少しずつ 現場は手探り 新型コロナ5類下げ1週間

 2023/05/16 07:52
お互いの表情が分かるよう輪を作り、給食を食べる児童ら=15日、日置市の美山小学校
お互いの表情が分かるよう輪を作り、給食を食べる児童ら=15日、日置市の美山小学校
 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられ、15日で1週間が過ぎた。鹿児島県内の小中学校では給食、運動会といった日々の活動や行事が従来の形に戻りつつある。ただ、これまで3年余り続けてきたコロナ対応を一気に緩めることには慎重な声が根強く、現場では手探りの状況が続く。

 「いただきます」。15日、美山小学校(日置市、36人)の教室に元気な声が響いた。1.2年生8人の複式学級では5類移行前、机を前向きにしたまま給食を食べていたが、9日からは、輪の形に並べる。児童たちは初め慣れない様子だったが、次第に笑顔が増えたという。

 2年生の西那奈実さんは「みんなの顔を見て食べる方がいい」。担任の重丸理香教諭は「食事のマナーやペースなど、2年生が1年生の手本になってくれるので指導しやすい」と話した。同校では給食時の座席配置を担任の判断に任せており、3.4年、5.6年は引き続き1人ずつ前を向く形だ。

 大規模校でも様子見が続く。鹿児島市中心部の小学校は、前を向く形式を続ける。教頭は「黙食を解除するなど、現実的な対策から取り入れ、少しずつ戻していけたら」。別の学校の教頭も「状況を見ながら判断したい。この3年で、非対面が普通になった」とこぼす。

 5月は春の運動会も各地で開かれる。鹿児島市教育委員会によると21日に10校、28日には15校の小学校が予定しており、午前中で終える短縮開催が目立つ。

 21日に開く和田小学校(767人)も午前までだが、4年ぶりに「運動会」が復活する。昨年までは「体育学習発表会」と銘打って、密を避けるため3学年ずつ2組に分けて開催。紅白の勝敗はつけなかった。

 保護者の参観も、おととしは1世帯1人、昨年も2人までとしていたが、今年は制限なしに。地域住民の観覧も可能にするなど、コロナ前の姿に近づける。5年の早川雅人君は「家族みんなが応援に来てくれるので勝ちたい」と張り切る。

 中学校では本年度、職場体験学習を再開するところもある。同市の甲南中(372人)は23日から3日間、4年ぶりに実施する。

 再開を決めた当初、介護福祉施設や飲食店など、以前受け入れていた事業所の半数近くから断られた。そこで保護者の協力も仰ぎ“新規開拓”。3年生127人が、スーパーやホテルなど44事業所で学ぶ。岩越悟志校長は「仕事を肌で感じる貴重な機会。地域の協力はありがたい」と感謝した。

 文部科学省は4月28日、学校向け衛生管理マニュアルを見直した。改定後のマニュアルは日々の体温チェックや日常的な消毒作業は不要と明記している。マスクについては4月から着用を求めていない。

 だが、教員からは「マスクを外すことに抵抗感を持つ子も多い」「コロナ前の学校生活へ完全に戻るのは難しいかも」と懸念する声も。県教委保健体育課の徳田清信課長は「児童生徒や保護者に寄り添いながら、適切な学校行事のあり方を模索していただきたい」と話した。