「金をもらって活動してる」…ネットで中傷された大学生 自衛隊基地の住民説明会で発言したのがきっかけだった
2023/05/20 20:50

ネットニュースのコメントを見る若者。「過激だから普段は見ない」という=鹿児島市
鹿児島大3年大久保涼香さん(20)は3年前、奄美市の自宅で「ガタガタガタ」という聞き慣れない音に驚いた。窓が揺れ、家を飛び出すと、近くの海上を輸送機オスプレイが飛んでいた。
奄美に陸上自衛隊の駐屯地ができて間もない頃。「すごい音だった」と同級生らと話題になった。だが、ほかに自衛隊や米軍について話した記憶はない。漠然と島の災害救助を支えてくれる。そう考えていた。
今年、偶然見たニュース記事で奄美大島にミサイル部隊が置かれ、中国を射程に入れる新型ミサイルの配備が取り沙汰されていることを知った。
「思っていたより物騒。もっと知った方がいい」と感じる。ただ、ネットで見るニュースなどで「安保」には手が伸びない。難しい上、賛否で激しく対立するイメージがあるという。
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お金をもらって活動している-。種子島出身の男子大学生(19)は高校時代、心ない中傷を受けた。西之表市馬毛島の自衛隊基地計画を巡る住民説明会で発言したり、選挙で投票を呼びかけたりしたのがきっかけだった。
大きな運動を起こしたかったわけではなく、賛否を超えて同世代で学ぶイメージを描いていた。古里を考えようと声を上げたのは「ごく普通のこと」と今も思う。ネットの意見が「極端なものが多い」と知った一方、それが事実のように独り歩きする怖さも感じる。
関西で暮らす今、家族らから「基地工事」の話を聞く。古里が知らない姿になっていくようで寂しい。「賛成、反対と言っても仕方がないという空気を感じる。でも、これだけ大きな変化が起こっているのに、何かを言いにくい現状ってすごく怖くないですか」
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京都大の吉田純教授(社会学)らが2021年に実施した自衛隊に関する意識調査(有効回答約2000人)によると、若い世代ほど自衛隊に「関心がない」とする割合が高く、29歳以下は無関心層が6割を超えた。
従来は安保課題への共通認識の上に右派、左派といったイデオロギーの対立軸があったが、今は共通の土台が乏しい。調査はそうした現状も裏付けた。安保は本来、経済や食料、エネルギー、外交が絡むテーマであるにもかかわらず、市民の分断が進み、軍事的な必要性だけを焦点化する風潮が危ぶまれている。
吉田教授は「無関心は政治を変えられる実感が乏しいからではないか」とみる。その上で「イデオロギー色が薄まった分、冷静に軍事を見られる側面も広がっている。どの年代層でも日本の国家像は『平和』で揺らいではいない。安保を複合的に考える視点が今こそ必要だ」と指摘した。
(連載「転換期の空気 安保激変@かごしま」1回目より)
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