ウクライナの原発が戦火にさらされても…立地県でも有事議論なお置き去り 漂う 見て見ぬふりの風潮
2023/05/24 21:03

運転延長の審査や議論が進む九州電力川内原発=薩摩川内市久見崎町
討論会を主催した川内青年会議所によると、事前の市民アンケートで原発問題は討論してほしいテーマの上位に入らなかった。新型コロナウイルス禍からの経済再生や子育て支援などの関心が高かったという。
一方、ロシアのウクライナ侵攻で原発が攻撃され、不安を感じる市民は少なくない。会社員の堂園明美さん(57)は「普段の地震でも川内原発は大丈夫か、と気になる。ウクライナの原発が戦火の中にあるのを見て、人ごとではないと怖くなった」と話す。
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全国の電力大手10社でつくる電気事業連合会の会長を務める九電の池辺和弘社長は、「ウクライナ侵攻によって、原発は電気の安定供給と料金の面からも役割は増した」と強調する。「安全性が確認された既存の原発は使い続けるべきだ」と運転延長を主張している。
政府は2013年、東京電力福島第1原発事故を踏まえ、世界一厳しいと自負する原発の「新規制基準」を施行した。この中で、航空機の意図的な墜落などテロ攻撃を受けても原子炉を遠隔操作で冷却する「特定重大事故等対処施設」の設置を義務付けた。川内2基は既に完成している。
ただ、新規制基準に軍事攻撃への対策は明記されていない。鹿児島県原子力安全・避難計画等防災専門委員会委員で、海外の原子力規制に詳しい原子力コンサルタントの佐藤暁氏(65)=東京=は「日本は諸外国と比較し、テロや軍事攻撃への備えが不十分だ」と危惧する。
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佐藤氏によると、米国では地上からのテロなどを想定し、100人超の武装した戦闘部隊を配置。各所に見張り台を建て、銃撃戦に備えた重厚な鉄筋コンクリートの盾をそろえているという。
日本政府は昨年12月、ウクライナ侵攻を受け、警察や自衛隊と電力会社の緊密な連携を目的に13道県に「原子力発電所等警備連絡会議」を設置した。それでも佐藤氏は「米国は規制当局が模擬戦闘まで検証している。対策が実動的かどうかという点で大きな差がある」と指摘する。
鹿児島県の塩田康一知事は原発への武力攻撃について、4月の定例会見で「全国知事会として国に対応や警備のあり方を要望した」と述べるにとどめている。
福島原発で直面した自然災害の脅威に比べ、テロや軍事攻撃へのリスクの議論は置き去りだ。見て見ぬふりの風潮はかつての「安全神話」と似た空気が漂う。
(連載「転換期の空気 安保激変@かごしま」5回目より)
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