膨らむ防衛費 欲しがる過疎自治体「施設誘致は活性化の追い風になる」 元海自司令官は言った。「血税を無駄にすれば自衛隊の信頼が崩れる」
2023/05/25 21:02

改修などが続く十島村の悪石島やすら浜港=2020年3月(十島村役場提供)
男性は陸上自衛隊瀬戸内分屯地(瀬戸内町)の大型弾薬庫の工事に携わった。引火や外部攻撃も想定し、使うコンクリートは「扱ったことのないぶ厚さ」。丘のように土で覆ったり、地中に造ったりする。3年前に着手した計画5棟の工事は今も続く。「1棟でも巨額を使う特殊な施設。どこにそんなに造るのか」
大手ゼネコン関係者も首をかしげる。「保安距離が必要で、場所選びは簡単でない。あちこちの離島や山に造っていかないと達成できない」。政府は港湾や空港などの大幅強化も目指す上、西之表市馬毛島の基地工事で6000人もの作業員を要しており、「中国の人手でも借りないと回らない」と苦笑する。
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防衛省によると、2022年度に施設の誘致で来省した全国の自治体や議会は18。うち県内はさつま町と南種子町だった。過去5年間、両町や中種子町、徳之島3町、十島村はほぼ毎年陳情している。
「官民一体で誘致したい」。さつま町の上野俊市町長は2月末の施政方針でも明言した。最大の理由は過疎だ。人口は10年間で約5000人減り、1万9000人を割り込んだ。
同町では5年前、商工会を中心に誘致団体が発足。具体的な場所や施設は限定せず、陳情や駐屯地視察を続けている。幹事長の山崎隆さん(55)は「防衛力強化は追い風になり得る。何とか地域活性化につなげたい」と話す。
十島村も「インフラ整備のためなら、ぜひとも」と熱望する。村の23年度当初予算約47億円のうち、村管理の港の改修などが10億7500万円を占める。例年8億円前後かかり、国の補助が8割あるとはいえ村の財源を苦しめる。担当者は「港は生活基盤そのもので、防災上も不可欠。予算が付くなら非常に助かる」
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防衛費は今後5年間で従来の1.5倍超の43兆円に膨らむ。財源は増税だ。元海上自衛隊自衛艦隊司令官の香田洋二氏(73)は防衛力強化の必要性を認めた上で、「計画ははやりの言葉を並べただけ。血の通わない作文だ」と指摘する。
現役時代、予算には厳しく「根拠」を問われ、数年かけて計画を練った。今は現場からの緻密な積み上げも、政治家の覚悟も見えないという。「ごまかしたまま進めても、結局困るのは現場。誠実な説明が圧倒的に足りない。血税を無駄にしていけば、これまで自衛隊が積み上げた信頼が崩れる」と警鐘を鳴らす。
県内で誘致意向を示す首長の一人はこぼす。「地方最大の課題は少子高齢化。本来はその解決が先だ。ただ、切実だからこそ防衛でも協力する」
(連載「転換期の空気 安保激変@かごしま6回目より」)
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