天文館の老舗洋食店「チロル」が31日閉店 夫妻2人で43年、本格ハンバーグやヒレカツ手頃に

 2023/05/30 12:16
閉店する老舗洋食レストラン「チロル」。1階入り口には食品サンプルも展示されている=鹿児島市中町
閉店する老舗洋食レストラン「チロル」。1階入り口には食品サンプルも展示されている=鹿児島市中町
 鹿児島市中町の老舗洋食レストラン「チロル」が31日で閉店する。「本格的なハンバーグやヒレカツが気軽に楽しめる」と、43年にわたって愛されてきた。食事に来る人はほとんどが常連で、開店当初から通う人や孫を連れてくる人も。オーナーの西村裕昭さん(73)と妻の英子さん(71)は「お客さんと一緒に店も年を重ねていくことができた。本当にありがたい」と話している。

 裕昭さんは脱サラ後に、現在の城山ホテル鹿児島で洋食の技術を学び、1981年1月、英子さんと一緒にチロルを開いた。コア・モールアーケード沿いの2階で30年営業し、2010年に近くの4階の現在地に移転した。開店当時は通りにアーケードはなく、天文館の洋食店も少なかったという。

 「何度でも来やすいように」と価格を抑え、和風ハンバーグやヒレカツは、サラダ、ご飯付きで850円。物価高が続く中でも、ここ6、7年値上げしていない。20年ほど前からの常連で週4、5回通う吉野町の轟木正子さん(88)は「手頃でおいしく、店の雰囲気も落ち着ける」と話す。

 閉店の理由について裕昭さんは「体力的に厳しくなってきたのと仕事だけの人生にしたくなかった」と説明。当初は20年8月に閉める予定だったが、新型コロナウイルスが流行する中、「コロナの影響で閉店したと思われたくない」と踏ん張ってきたという。

 営業時間は午前11時~午後9時(ランチは午前11時半~午後2時半)で、31日までは休みなし。裕昭さんは「特別な料理があるわけではない。お客さんに支えられてきた」。英子さんは「一生懸命働いてきて、今は幸せ。閉店後は2人で旅行を楽しみたい」と話している。