原発60年超運転可能に 立地の薩摩川内市 賛否交錯「夜の街が潤う」「本当に大丈夫か」 福島出身者は憤る「思いは政治家に届いていない」

 2023/06/01 07:28
九州電力川内原発(資料写真)
九州電力川内原発(資料写真)
 原発の60年超運転を可能にする「GX脱炭素電源法」が成立した31日、九州電力川内原発が立地する鹿児島県薩摩川内市民の賛否は交錯した。議論が深まらないままエネルギー政策を転換させる岸田政権に「本当に大丈夫なのか」と戸惑う自民支持者も。県内の福島出身者は「古里を失う痛みが分かっていない」と憤った。

 薩摩川内市で飲食店を営む吉永李紗さん(36)は「うれしい」と歓迎。定期検査中は平日でも夜の街に出張で訪れた人が繰り出すといい、「地域経済に貢献してもらい、街が潤っている」と存在の大きさを訴える。

 東京電力福島第1原発事故を踏まえ、原発依存度を低減させるはずだったエネルギー政策。普段は自民党を支持する同市の無職男性(76)は「60年超の方針は突然出てきた。将来を考えると大丈夫だろうかという思いがある」と明かす。

 同市宮崎町の無職藤崎照三さん(72)も「放射性廃棄物の処分方法などの議論は尽くされていない。首相は国民生活に直結する大事な問題を簡単に決めているように感じる」と批判する。

 原則40年の運転期限が迫る川内原発1、2号機を巡っては、原子力規制委員会が20年の運転延長を審査している。

 福島第1原発が立地する福島県双葉町出身の斉藤武夫さん(68)=霧島市福山=は「20年の延長が可能かどうか審査している段階で、60年超の結論を出すのはあまりにいい加減。福島の思いは政治家に届いていないのだろう」と肩を落とした。