【詳報】サッカースタジアム構想 鹿児島市長「北ふ頭整備に全力を傾注」 必要面積の2倍余り、港湾計画の見直し必須

 2023/06/07 07:28
スタジアムの新たな候補地となった鹿児島港本港区北ふ頭(手前、本社チャーター機から)
スタジアムの新たな候補地となった鹿児島港本港区北ふ頭(手前、本社チャーター機から)
 鹿児島港本港区エリアで多機能複合型サッカースタジアムを構想する鹿児島市は6日、ドルフィンポート(DP)跡地と住吉町15番街区を候補地から除外し、県有地の北ふ頭を候補地にすると明らかにした。浜町バス車庫を加えた当初の3候補地をすべて撤回し、大きく方針転換した。

 同日の市議会特別委員会で下鶴隆央市長は「2カ所が一層厳しくなった」と説明。「北ふ頭の整備に全力を傾注する」と述べた。

 DP跡は県が新総合体育館を2029年度にも開設するスケジュールを4月に公表。本港区エリアの全体像を決める県利活用検討委員会は3月、隣接する緑地を保全する方針を再確認し、緑地の大半をつぶすスタジアム構想は厳しさを増していた。住吉町も土地拡張が必要で市は年2200万円の赤字を見込んでいた。

 喜界航路が就航する北ふ頭はスタジアム整備に必要な2倍余りの面積があり、市は中心市街地からの回遊性や集客が期待できるとした。整備には土地利用を規制する港湾計画の見直しが必要となるため、港湾関係者の意向を聞き取り、具体的な配置案を検討する。

 市の表明を受け、報道陣の取材に応じた塩田康一知事は「港湾計画の見直しには一般的に10年、場合によってはそれ以上かかる」と指摘。港湾機能への影響、中心市街地への回遊性などを課題に挙げた。

 特別委は、中断や休憩を含め約7時間半に及んだ。委員から「断念した3候補地は何だったのか。同じ轍(てつ)を踏まないか」「港湾計画見直しに時間がかかるのを理解した上で整備を目指すのか」との意見が出た。

 下鶴市長は特別委の要請に応じ終盤に出席。「人口減社会で鹿児島が選ばれる街になるにはスタジアムが重要だと県や港湾関係者に丁寧に説明したい」と理解を求めた。

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 北ふ頭 鹿児島県と国が離島航路を集約する目的で整備し、1993年に完成した。総面積は約11ヘクタール。かごしま水族館や緑地、岸壁を除き約7.5ヘクタールあり、港湾計画では「ふ頭用地」に位置づけられている。現在は喜界航路のみが就航。3階建ての旅客ターミナルや貨物倉庫などの港湾施設の利用は一部にとどまる。