じかに面会 緩和進む「触れ合えて安心」 コロナ5類移行1カ月 高齢者施設や病院、感染対策との両立模索

 2023/06/08 08:02
入居者(中央)の手足をさすりながら話しかける家族=7日、いちき串木野市の潮風園
入居者(中央)の手足をさすりながら話しかける家族=7日、いちき串木野市の潮風園
 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行して8日で1カ月になる。鹿児島県内の高齢者施設や医療機関は、感染対策をしながら入所者や入院患者との面会の制限を緩めつつある。仕切り越しでなく直接触れ合えるようになった家族は「気持ちが伝わりやすく安心」と喜ぶ。

 「明日も来るからね。頑張るんだよ」。いちき串木野市の池嵜道明さん(93)は、妻トメノさん(96)の頬をそっとなでた。昨年1月、同市の特別養護老人ホーム「潮風園」にトメノさんが入所以来、娘の入江美恵子さん(67)とほぼ1日おきに通う。

 同園は5類移行の5月8日以降、ロビーの一角でシート越しだった面会場所を各居室に変更。時間や人数も緩和した。トメノさんはまぶたを開けにくくなっているが、手をさすったり顔を寄せたりして呼び掛けると、うなずき手を動かして応える。入江さんは「直接触れることで気持ちが伝わり、母がうなずく回数が増えた気がする。家族にとっても安心感が違う」。

 国は高齢者施設や医療機関での面会について、利用者の心身の健康を考慮し実施するよう促している。ただ高齢者などは感染すれば重症化の恐れがあり、進め方は施設によってさまざまだ。

 鹿屋市の介護老人保健施設「ナーシングホームひだまり」は3月以降、1日当たりの面会組数を徐々に増やしている。現在も対面は専用スペースで、アクリル板越し。重吉邦寿施設長(56)は「定点報告の数字や近隣の感染状況を見ながら、慎重に緩和していきたい」と話した。

 鹿児島市の鹿児島厚生連病院は、5月15日から再開に踏み切った。病棟ごとに曜日を決め、時間や人数は限定、各病室ではなく原則病棟のラウンジを使う。担当者によると、患者から「久しぶりに家族に会えた」と喜ぶ声が上がる。

 同市のいまきいれ総合病院は、対面での面会は7月から再開する予定。浜崎秀一院長は「救急患者の受け入れも多く、集団感染が起きれば命の危険もある」と緩和の難しさを説明する。危篤状態など特別な場合を除き、それまではオンラインだけの対応を続ける。浜崎院長は「ウイルスがなくなった訳ではない。面会する際は、マスクや検温、手指消毒など感染対策を忘れないでほしい」と呼び掛ける。