養蜂業は甘くなかった… ハチミツ男子、ならば「付加価値の高い商品を」と酒造る

 2023/06/09 09:02
一戸悠里さん
一戸悠里さん
■一戸悠里(いちのへ・ゆうり)さん=鹿児島市

 蜂蜜を原料にした「ミード」と呼ばれる酒の製造販売を手がける。進取の気風が息づく薩摩にあやかり、鹿児島市に「Satsuma Craft」という醸造所を構えて造る蜂蜜酒の銘柄は「meadol(ミードル)」。「蜂蜜の濃厚な甘みを味わえる。ミード業界のアイドル的な存在になってほしい」との思いを込めた。

 神奈川県出身。大の甘党で中でも蜂蜜が好きだった。鹿児島大学生のころ蜂蜜づくりに興味を持って南九州市の養蜂園を訪れた。価格が低迷し、セールス方法に悩む業者が多く、甘くはない現状を知った。「付加価値の高い商品を作って業界を盛り上げたい」。大学を中退して20年1月に「honeyboy&co.」という会社を設立。ホットミルク専用蜂蜜などさまざまな商品を考えた末、ミードに目を付けた。

 酒造会社に委託せずに自ら製造しようと、東京の醸造所で約1年半修行。ミードに適した酵母の種類や発酵方法を学び、昨年3月に酒造免許を取得。7月から自社製造を始めた。

 商品が大手通販サイトのランキングで上位に入り「認知度は広がってきた」と手応えを感じる。今年5月には気軽に味わえる場所をつくろうと醸造所にカフェを併設。蜜源や担い手が不足する業界を支え、原料を安定して調達できるよう自ら鹿児島市に養蜂拠点を設けるなど事業展開を進める。「自社で採った蜂蜜も使い、新商品を提供できたら」と次を見据える。鹿児島市在住、26歳。