【馬毛島基地整備】防衛省工事・設計の半数で増額変更 「税金の無駄遣い」「不正の温床恐れ」専門家が批判

 2023/07/22 07:33
大幅な増額の変更が記された関係書類
大幅な増額の変更が記された関係書類
 鹿児島県西之表市馬毛島の米軍機訓練移転を伴う自衛隊基地整備を巡り、防衛省が2022年度に契約した工事や設計70件のうち、少なくとも約半数の32件で増額の変更が続き、契約額は当初から168億円増の1101億円になっていることが21日、南日本新聞の調べで分かった。

 契約変更は、支出委任を受ける国土交通省発注の随意契約でも相次ぎ、契約額が倍増していることが判明。防衛省は「議決を受けた予算の範囲内で適切に対応している」としているが、着工を先行させ事後調整を繰り返している構図がうかがえる。防衛、国交両省で確認できた22年度分の契約額は4080億円。

 九州防衛局熊本防衛支局の「変更契約状況調書」によると、22年度の変更で最大の増額は「鹿島・五洋・藤田」JVが受注した敷地造成。22年10月に54億円、23年3月に88億円を増やした。理由は「計画調整」「設計精査」などとしている。

 このほか、施設整備の統括監理が当初から5億円、駐機場舗装が3億円増えた。増額の規模は億単位の変更や、数千万~数十万円と幅があった。

 地元が反発する中、基地本体工事の入札を強行した21年度分の契約でも変更が目立っている。入札の皮切りとなった生コンクリートプラント事業は「計画調整」を重ね、31億円増。関連工事の遅延などを理由とした工期の延長は9件で最長は4カ月だった。

 同局は当初契約の文書をホームページに掲載しているが、契約変更の資料は熊本防衛支局で閲覧するか情報開示請求が必要。

 防衛省は22年度予算に馬毛島の整備関連費として4624億円(当初3183億円、補正1441億円)を計上している。いずれの契約変更も補正予算の可決や工事の進展などを受けた対応。残る予算は物品調達や繰り越しに充てるとしている。

■「あり得ない」

 西之表市馬毛島の自衛隊基地整備を巡る工事契約の変更が相次いでいることに、財政や安全保障の専門家は「あり得ない」と批判。国に対し、国民への丁寧な説明を求める。

 白鷗大の藤井亮二教授(財政政策)は「増額があまりに巨額で、財政民主主義の理念をないがしろにしている」と指摘。防衛のような重要な政策での変更は、国会審議などで国民が納得できるような説明をすべきだと話す。

 随意契約については、工事に必要な技術が全国に1社しかなくても競争入札はできると説明。「スピードを求めて随意契約したのなら透明性に欠ける。業者のいいなりになるなど、不正の温床と化す恐れもある」と懸念を示す。

 沖縄国際大の前泊博盛教授(安全保障論)は「大幅な増額は公共事業として破綻している。税金の無駄遣いだ」と批判する。当初計画されていなかった重大な設計変更につながる可能性にも言及した。

 馬毛島の整備費は今後も膨らむとみる。一方で、地元に全てのお金が落ちるわけではないと強調。「建設工事の利益は外へ、被害は地元に残る。これが基地経済の怖さだ」と警鐘を鳴らした。