〈馬毛島工事費倍増〉県にも市にも報告ないまま…繰り返される計画変更や随意契約 際立つ不透明さ

 2023/07/22 11:33
自衛隊基地本体の着工から半年がたった西之表市馬毛島=7月10日(小型無人機で撮影)
自衛隊基地本体の着工から半年がたった西之表市馬毛島=7月10日(小型無人機で撮影)
 鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地整備で、国は随意契約を繰り返し、契約額が当初から倍増したことが南日本新聞の調べで明らかになった。地元自治体が知らぬ間に粛々と進む巨大工事。予算執行や計画見直しの不透明さが際立ち、疑問の声が上がる。

 21日にあった西之表市議会馬毛島対策特別委員会では、国土交通省発注分の相次ぐ随契が話題に上がった。委員の1人が「工事内容の見直しが進んでいることがとても気になる」と発言。市側は「防衛省にしっかり確認を求めていきたい」と答えた。

 ある市職員は「これだけの変更が国会審議を経ずにできるとは。行政マンとしては不思議でならない」と驚く。工事の費用や内容変更については地元自治体にも伝えられていないという。

 県と国は5月、馬毛島関連工事の日程や資材の使用予定を共有する連絡会を初めて開いた。県技術管理室によると、工事の計画見直しについて報告はなかった。「国の事業なので県がコメントする立場にない」とした。

 県監理課の鶴田晃紀課長は、国と県で適用される法令は異なるため「単純比較はできない」とした上で、「基本は競争入札」と話す。同課によると、県は原則として随契の対象を予定価格250万円未満に限っている。この価格帯で昨年度契約した公共工事約3400件のうち、随契は12件。災害時など緊急を要する時などに結んだ。

 「離島の離島」を丸ごと基地化する前例のない工事。建設業関係者は「予算が膨らむ懸念も分かるが、あれだけ巨大で特殊な事業をできる社は限られる。早期完成のため、入札を重ねるより随契で調整する方が効率的だ」と話した。