馬毛島工事 種子島を行き交う大型車 防衛省明言の「交通誘導員」実現いつ? 通学の安全対策 進まぬまま夏休みへ

 2023/07/25 09:03
防衛省の対策を報道陣に説明する原田道明参事官(左)=5月12日、西之表市役所
防衛省の対策を報道陣に説明する原田道明参事官(左)=5月12日、西之表市役所
 鹿児島県西之表市馬毛島の自衛隊基地整備を巡る市民の懸念事項について、防衛省が打ち出した対策が進んでいない。工事車両の増加に伴い、通行ルートの学校に誘導員を配置すると明言してから2カ月余り。実現しないまま、市内の小中学校は21日から夏休みに入った。

 同日あった市議会馬毛島対策特別委員会。委員の「誘導員はいつ始まるのか」という質問に、市当局は「調整中。2学期には開始してもらいたい」と答えるのが精いっぱいだった。

 1月に基地本体工事が始まり、種子島では国道など主要道を中心に大型車が行き交うようになった。基地整備への賛否を超え、多くの市民から交通安全対策を求める声が上がっている。

 そもそも、誘導員の配置を持ち出したのは防衛省だった。5月12日の市との協議で表明し、同省参事官は「通行ルート沿いにある学校の登下校時に交通誘導員を置く」などと述べた。ただ、場所や開始時期には踏み込まず、その後も両者の協議は開かれていない。

 “放置状態”が長引く背景には、市と防衛省の意向にすれ違いがあるとみられる。国道などの重要道では「交通誘導警備業務」の国家資格が必要になる。市ができるだけ多くの場所に配置したくても、同省は人材確保の観点から絞り込まざるを得ないというわけだ。

 基地整備はほかに、国土交通省も港湾工事を担当している。通行ルートのすみ分けなどを巡り、「国交省と防衛省と責任をなすり付け合いが起きているのでは」との指摘もある。

 夏休みとはいえ、中学校の部活動などで登校する生徒も多い。命に関わる問題だけに、対策がおざなりになれば事業主体である防衛省への批判は高まりかねない。