「腹に落ちない」「なぜ安全と言える」…米軍無人偵察機MQ9、事故原因明かさぬまま再開へ 鹿屋市長ら防衛省説明に強い不満

 2023/09/30 11:58
防衛省側との面会で疑問を投げかける中西茂鹿屋市長=29日、鹿屋市役所
防衛省側との面会で疑問を投げかける中西茂鹿屋市長=29日、鹿屋市役所
 海上自衛隊鹿屋航空基地(鹿児島県鹿屋市)で米軍無人偵察機MQ9が滑走路を外れたオーバーランを巡り、防衛省幹部が29日、市役所と県庁を訪れ、停止中のMQ9の運用を米軍が30日以降に再開する方針を伝えた。事故の詳細や原因は米軍の情報保全などを理由に明かさなかった。11月20日までの1年間としている運用期間については、延長はないことを米側に確認したという。

 「すっと腹に落ちない」。海上自衛隊鹿屋航空基地で米軍無人機がオーバーランした事故を巡って、防衛省幹部が鹿屋市や県庁などを訪れた29日、中西茂市長は事故原因を明かさなかった同省側の説明に強い不満を示した。市民や市議からも疑問の声が上がった。

 面会の冒頭、江原康雄九州防衛局長らは「ご心配やご迷惑をかけて申し訳ない」と謝罪。米軍の再発防止策などを踏まえ、無人機の安全性を「合理的に納得した」と表現した。

 ただ、事故の詳細や原因は米側の規則や対米関係を理由に明かさなかった。応対した中西市長と花牟礼薫議長は首をかしげながら「原因は何だったのか」「なぜ安全と言えるのか」と繰り返し問いただした。

 同省在日米軍協力課の今田克彦課長は「在日米軍の横田基地(東京)に何度も足を運び、やりとりの中で得た情報やフィーリングを持ち帰って検討した」と回答。事故原因については「米軍は隠したいというより、情報保全の観点から出せない状況」と釈明した。

 江原局長らは基地周辺の町内会長らでつくる市基地関係連絡協議会、市議会全員協議会でも報告した。白崎町内会の上西孝二会長(70)は「説明を果たしたという国側のアリバイづくりにしか思えない。この程度の情報なら事故があった直後に言ってほしかった」とあきれた表情で話した。

 中西市長は江原局長らとの面会後、報道陣に「大変残念」と述べ、具体性に欠けた内容を批判した。オーバーランで人的被害はなかったが「基地外で起きたらと思うとぞっとする。小さな事故だと軽視してほしくない」と語気を強めた。

 同日夜、県庁でも説明があり、長島和広危機管理防災局長は「原因究明を求めたので、(説明が)あってしかるべきだ」と不満をにじませた。