未曾有の「8.6水害」から30年 市災害文書 永久保存へ「歴史的史料として教訓継承」

 2023/10/01 08:03
写真や鹿児島市災害対策本部会議資料が残る=鹿児島市役所
写真や鹿児島市災害対策本部会議資料が残る=鹿児島市役所
  1993年の8・6水害から30年を迎え、鹿児島市は関連の公文書について、最長30年とする保存期間を超えて「歴史的公文書」として永久保存する方向で検討している。災害文書は当時の対応や復旧事業の検証のために重要な記録で、教訓を継承する歴史的史料となる。全国で大規模災害が多発する中、市は「今後の防災対策に生かしたい」としている。

 市は公文書の取り扱いについて条例規則で、保存期間を最長30年と定める。93年の8・6水害が起きた当時に作成されたものは本年度で期限が切れる。30年を過ぎた公文書は「歴史的公文書」として永久保存するか廃棄される。

 市危機管理課が所管し、30年の保存期間を迎える8・6関連の公文書は32種類。氏名や住所を記した被害調査票や災害対策本部の会議資料、現場写真などが残る。その中には、本年度見つかった段ボール1箱に入ったままの状態になっていた文書も含まれる。

 同課は全公文書を永久保存する方針。最終的には来年度に開かれる市公文書管理委員会に諮り決定する。歴史的公文書になれば専用書庫で保管される。

 同課の中島智広課長は「住民に大きな被害が出た水害は、今の時代にも多くの課題や教訓を残している。保管する文書は、基本的に全て歴史公文書にあたるという認識だ」と説明した。

 東北大災害科学国際研究所の柴山明寛准教授(災害情報学)は「過去の災害を振り返るためには文書を身近な場所に置き、すぐに取り出せる状況にすることが大切。自治体が対応の問題点を検証し洗い出してこそ、災害に強いまちづくりにつながる」と強調した。

 ■8・6水害とは 1993年8月6日の記録的な大雨で鹿児島市周辺では崖崩れや土砂崩れが至る所で発生し、死者・行方不明者は49人に上った。家屋の全半壊は400戸を超え、河川の氾濫で1万戸以上が浸水。被災者は体育館などで長期間の避難所暮らしを余儀なくされた。