災害の文書 どこまで残せば…東日本大震災の被災自治体、保存基準作成や公文書館開設の動き

 2023/10/01 18:01
8・6水害関連文書の原本などが入った段ボール=鹿児島市役所
8・6水害関連文書の原本などが入った段ボール=鹿児島市役所
 鹿児島県内は1993年、豪雨災害が相次ぎ多くの犠牲者を出した。被災自治体では当時の文書が分散するなどし、全容が把握できないケースが生じている。災害の記録を後世にどう残すか。2011年の東日本大震災の被災地では保存対象のガイドラインを設け、公文書館を開設する動きも出ている。

 93年に県央地域を襲った「8.1豪雨」で甚大な被害に見舞われた霧島市。「豪雨に関する文書は各課に分散し、全体は把握できていない」とする。担当者は災害関連文書の保管について「どの程度の災害まで残すのかという判断が難しく、十分な保管場所を確保できない」などの課題を挙げる。

 台風13号上陸に伴う土石流で20人が亡くなった南さつま市の大迫雄作危機管理官は「把握している分では当時の文書は見当たらない。旧町の規定に沿って廃棄された可能性もあるが、記録がないのではっきりしない」と話す。

 大量の文書を抱える東日本大震災の被災地でも模索が続く。

 仙台市は今年7月、歴史的公文書の選別基準を作成した。東日本大震災に関する保存対象を「避難所設営・運営」「児童生徒の心のケア」「遺体安置所の対応」などと具体的に例示する。

 震災関連文書などを収める公文書館も開設。市の担当者は「公文書は市の活動や歴史的な事実の記録。将来の市民に説明できるよう適切に保管したい」と意義を説明する。

 宮城県女川町も永久保存する基準を定めた。総務課は毎年、各課に分類の手順を伝えるなど意識の共有を図る。同課の土井英貴課長補佐は「職員が入れ替わっても震災時の対応を継承できるように適切な保管方法を考えていく」と話した。