聞いている人も話している人も...

(2019/08/27 06:30)
南日本新聞ニュース
 聞いている人も話している人も幸せな気分になる-。絵本の読み聞かせを体験した中学生の感想が、先日のひろば欄で紹介されていた。目を輝かせる子どもたちの表情に大切な何かを教わったのだろう。
 子どもたちに人気の絵本「だるまちゃん」シリーズなどで知られ、昨年92歳で亡くなった絵本作家の加古里子(かこさとし)さんの原点は読み聞かせだった。サラリーマン時代、貧しい地域に出かけ、自作の紙芝居を披露していた。
 「子どもたちをあっと言わせてやろう」と練り上げた作品が見向きもされないことがあったという。子どもたちが何に関心を持ち、知りたいと思っているのか考え抜くことが大切だと、「未来のだるまちゃんへ」(文春文庫)に記す。
 加古さんの回顧展が鹿児島市のかごしまメルヘン館で開かれている。原画の短い文章の一字一句に推敲(すいこう)の跡が残る。子どもたちと本気で向き合う姿勢は生涯変わらなかった。
 桜島で暮らす人々の思いも描かれた「ひをふくやまマグマのばくはつ」やデビュー作の「だむのおじさんたち」の展示には、科学の面白さを絵本で伝えた先駆者の熱意がほとばしる。
 加古さんは子どものことを「子どもさん」と呼び、一人前の人間として接したそうだ。「大切なことは、すべて子どもたちに教わった」という言葉をかみしめながら夏休みを振り返るのもいい。回顧展は来月16日まで(火曜休館)。

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