支持分散「3人激戦」
官僚出身2人が“空中戦”/現職推薦の自民引き締め
(2020-07-06)

知事選の活動について協議する自民党県連=7月3日、鹿児島市
「政権与党推薦の候補が勝つか負けるかという極めて重い選挙だ」。3日、鹿児島市であった自民党県連の執行部・選挙対策常任委員の合同会議。森山裕会長は冒頭のあいさつで三反園訓氏(62)への支援を呼び掛けた。
17日間の選挙戦は半分を終え、会議では出席者からこれまでの取り組みが報告された。「地元では他の候補の名前を聞く」など逆風を思わせる言葉も出たという。園田修光選対委員長は「(大票田の)鹿児島市に照準を合わせ、現職でなければという方向に持っていきたい」と語った。
自民では他の候補を支援する県議もいて、地域ごとに現職支持の濃淡がある。党本部は各友好団体と関係が深い国会議員を送り込み、引き締めを図る。森山会長も、会議に出席した県議らに「自分たちの地域を確実に(現職支持に)してほしい。選挙は結果が出る」と念押しした。
一方、前半戦で支持を伸ばしたとみられているのが新人で前九州経済産業局長の塩田康一氏(54)だ。ラ・サール中高、東京大卒、官僚出身と共通点が多い元職の伊藤祐一郎氏(72)とは反現職の立場で一本化を探ったが、まとまらなかった。
協議の内容についてあまり語らなかった塩田氏は告示後、「今(三反園氏)でもなく、前(伊藤氏)でもない選択肢が必要」と真っ向勝負に出た。各地の街頭演説では、現職批判に加え「1期だけでいいからという人に任せられない」「経験が浅くても、行動力や決断力のある若い知事が全国で活躍している」と、伊藤氏を意識した発言も増えた。
こうした主張に対抗するため、伊藤陣営はホームページに反論を掲載した。「1期だけとか、2、3年でいいといった発言はしていない」「(新型コロナウイルス感染拡大の)第2波を起こさないためには危機管理に精通している人物が必要」といった内容だ。伊藤氏は「批判をそのまま受け止めて敗れた前回の反省がある。明快に考え方を述べることで区切りを付けた」と意図を説明する。
終盤に向け、伊藤氏は「正々堂々と互いの政策を主張し、選挙活動で競えばいい」、塩田氏は「元職も意識はするが、相手は現職。残り1週間、候補批判に終始せず、政策の中身で戦う」と意気込む。
ただ、新型コロナの集団感染発生で各陣営は活動内容の変更を迫られている上、投票行動への影響も懸念される。反現職を掲げる2人の“空中戦”は、現職を利するとの声もある。県議の1人は「コロナ対応に追われる現職に、また風が吹くかもしれない。塩田氏と伊藤氏がつぶし合えば共倒れになる」と話した。
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