2020鹿児島市長選 数字で点検-森市政16年

 12月に任期満了となる鹿児島市の森博幸市長(70)が引退する。2004年から始まった森市政の4期16年で、県都の姿はどのように変わったのか。トピックごとに数字から読み解く。

(2)緑化軌道の総延長 8.9キロ

他都市に先行、維持費年6000万円
(2020-10-17)
市電の軌道敷を青々と覆う芝生=鹿児島市東千石町
市電の軌道敷を青々と覆う芝生=鹿児島市東千石町
 森市政1期目の2006年度から始まった市電の軌道敷緑化は、7年がかりの事業だった。中心市街地の道路との併用区間全8.9キロが、“緑のじゅうたん”に変わった。保水と排水に優れるシラス基盤と土を敷き、冬場も緑を保つ改良型高麗芝が覆う。面積にして約3万5000平方メートル。市中央公園の芝生の12倍に当たる。
 アスファルトから芝生に変えた効果の一つがヒートアイランド現象の緩和だ。市の調査によると、夏場の地表温度は車道より17~18度低くなっていることが確認された。沿線の騒音低減効果もあるという。
 全国に先駆けた試みの総事業費は約12億円。評価は高く、緑の都市賞の国土交通大臣賞やアジア都市景観賞などに輝いた。県外客や市民の多くも「緑がきれいで心地いい」などと好感を抱く。
 夏の風物詩「おぎおんさぁ」で傘鉾・みこしを担う鹿児島祇園睦会の永田和弘総代(59)は「照り返しが強いアスファルトを練り歩くから、休憩時は軌道敷の芝生に癒やされる。暑さも和らぐ」と評価。その上で「もっと身近な歩道にも緑地帯があれば」と願う。
 軌道緑化は熊本市電や長崎電気軌道なども一部導入しているが、鹿児島市電の規模は群を抜く。「今でも他県の自治体や事業者から問い合わせがある」と市公園緑化課。
 一方、維持管理費には年6000万円程度要する。水やりや施肥、芝刈りは不可欠。営業運転を終えた深夜、市交通局が独自開発した散水電車・芝刈り装置が人知れず稼働している。