2020鹿児島市長選 数字で点検-森市政16年

 12月に任期満了となる鹿児島市の森博幸市長(70)が引退する。2004年から始まった森市政の4期16年で、県都の姿はどのように変わったのか。トピックごとに数字から読み解く。

(11)耕作放棄地 994ヘクタール

農家減少、高齢化で常態化
(2020-11-05)
 鹿児島市郡山町の八重の棚田は2013年、市の景観形成重点地区の第1号に指定された。晴れた日は中腹に広がる石積みの田んぼから桜島や大隅半島が望める美しい場所だ。
 だが、担い手不足などで耕作放棄地が少しずつ増えているという。ある住民は「5年~10年先は大丈夫だとしても、それ以降棚田を守っていけるのか」と不安を口にする。
 耕作放棄地は過去1年以上作付けせず、数年後も予定のない田や畑などを指す。16年前、農村地域が多い旧5町と旧市域が合併して誕生した鹿児島市は、農業振興を重要な柱の一つにしているが、農家の減少や高齢化が響き、耕作放棄地が常態化している。
 国の統計によると、千ヘクタール前後で推移する放棄地に対し、耕地面積は年々減少している。19年度の耕地面積は3180ヘクタール。これに対し、放棄地は994ヘクタールと3分の1近くに迫った。平和リース球場(県立鴨池球場)の広さに換算すると368個分だ。
 市も手をこまねいていたわけではない。森博幸市長2期目の10年4月には、「遊休農地バンク」を県内の市町村で初めてスタート。売却や賃貸希望の農地をネットで公開する仕組みで、これまでに135カ所、10ヘクタール超を仲介した。16年度には市役所に担い手育成係を新設し、新規就農者確保に注力。17年度まで1桁だった就農者は18、19年度はそれぞれ12人に増えた。それでも農離れの流れを変えるまでには至っていない。
 市農政総務課の下野聡課長は「従来の対策に一定の効果はあるが、今後も放棄地が増えてゆく恐れがある。きめ細かな取り組みが必要だ」と話す。
=おわり=