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迷走した「攻撃的サッカー」 鹿児島U 3得点は1試合のみ、J3参入後最低の7位 選手・監督だけじゃない、クラブの責任は?
(2021-12-08)
ホーム最終戦で場内を一周する選手たち=11月28日、白波スタジアム

2021鹿児島Uの戦績
11月28日のホーム最終戦。0-2で敗れ、今季ホームでは5勝にとどまった=白波スタジアム
昨季までと同様に「攻撃的サッカー」を掲げた今季も、得点力不足に泣いた。ボール保持率はリーグトップだったが、複数得点は28試合中11試合にとどまり、3得点は1試合のみ。自陣で守備を固める相手に対し、パスを回させられている印象が強かった。上野展裕監督は「攻撃のバリエーションを含め得点力がほしかった」。
先制された後に逆転して勝ったのはわずか1試合。チームで唯一、全試合に先発した中原は「(事前の)スカウティングと違った時に、臨機応変な対応が足りなかった」と反省する。大卒ルーキーの山本は「失点後にチームが落ち込むのを感じた。声を掛ける選手が少なかった」、衛藤は「リーダーになる選手がもっと増えないと」と危機感を口にした。
12戦無敗だった首位熊本に勝つこともあれば、下位の藤枝や今治に0-3で大敗することも。安定感を欠いた戦いぶりは、昨季と変わらなかった。
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突然の監督交代にも見舞われた。今季就任したオーストラリア出身のアーサー・パパス氏が5月下旬、「家庭の事情」を理由に退任。7月上旬に上野展裕監督の就任が決まるまでの6試合を、大島康明ヘッドコーチが暫定的に指揮を執った。サッカー解説者の久永辰徳氏は「迷走した1年。現有戦力でどういうサッカーをして昇格するのか、方向性が分からないままだった」。
中原やチームトップの9ゴールを挙げた米澤らを除き、メンバーは固定しなかった。久永さんは「マンネリはなかった。だが逆に、ミスをしたら替えられる。そのためミスを恐れる雰囲気になり、結果的に成長させられなかった」と指摘する。
2連勝が2度だけと波に乗り切れなかった。久永氏は「J2昇格まではとんとん拍子だったが、今は転げ落ちないように踏みとどまっている状態。クラブのあるべき姿、方向性を見直す機会になったのでは」と語った。
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昨季に続く新型コロナウイルス下での運営ながら、明るい材料も多かった。観客動員50%の制限がかかった中で開催されたホーム戦14試合の平均来場者数は、3738人でJ3トップだった。
今季は特定のブランドとサプライヤー契約を結ばないオリジナルユニホームで臨み、グッズ収入は約3400万円増。スポンサーも58社増えた。ただ、感染状況が落ち着きを見せ、経済が徐々に動き出した中で「逆に負担を強いられる業種もある」(徳重剛代表)として、来季のスポンサー収入は2000〜3000万円の減額を見込む。
2年続いたコロナ禍で「知見ができたことは大きい」と徳重代表。来季へ向け「クラブと地域のつながりをより強めたい。飲食を含めたコラボレーション企画をやっていきたい」と意欲を見せる。
県民の関心を保つためには、チームの強化はもちろん、安定したクラブ運営は不可欠だ。上野監督をはじめ、リーグ終盤で先発出場した中村や三宅らと契約更新しなかった。「期待と大きくかけ離れた1年。選手・監督だけの責任? クラブはどう考える?」。5日の最終戦でサポーターが掲げた横断幕の言葉をどう受け止めるか。プロとしての責任が問われるのは、監督や選手だけではない。
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