2023/07/21 18:20

陸上×障害者支援施設=有馬佳苗さん(37)■ベテラン、作業てきぱき 3種目で地元V目指す

お菓子を一つずつ手作業で袋詰めする有馬佳苗さん=鹿児島市のサポートなごみ
お菓子を一つずつ手作業で袋詰めする有馬佳苗さん=鹿児島市のサポートなごみ
 新型コロナウイルスの影響で3年延期となった鹿児島国体と全国障害者スポーツ大会が10月、県内各地で開催される。仕事や学業に励みながら、あるいは障害を乗り越え、アマチュアスポーツの祭典を目指す選手たちの挑戦は続く。延期前に連載した「素顔の挑戦者」第2章-。



 鹿児島市の障害者支援施設「サポートなごみ」の作業室の作業台に載せられた、鹿児島の郷土菓子「げたんは」や焼き菓子ラスクなどの袋詰めをてきぱきとこなしていく。なごみの就業支援は菓子作りにも力をいれており、スーパーや物産館での人気商品が数々あり、1日1800個扱うことも。働き始めてから10年となる週5日勤務のベテランは手際よくさばいていく。

 取材で訪れた日はお土産として人気の黒糖を使った焼き菓子の袋詰めに精を出していた。同施設の菓子班の責任者納富吉弘さん(62)は「いつも楽しそうに仕事している。頼りになっている」と太鼓判を押す。

 昨年の全国障害者スポーツ大会(障スポ)栃木大会では、知的障害者壮年女子50メートル走で大会記録を更新し金メダル。立ち幅跳びも制し2冠に輝いた。障スポ競技は、なごみの職員から勧められて5年ほど前から始めた。「小学校、中学校では足は速くなかった。どちらかというと最下位のほう」と話すが、「高校の体育祭で1位となり、自信が芽生えてきた」。

 高校卒業後、働く場が見つからず、9年間家事手伝いの状態が続いた。退屈だった生活が、ようやく出合えたなごみという「職場」で一変した。「みんなと笑い合ってやる仕事は楽しい。家事手伝いの時とは全然違う」。体を動かすことがとにかく好きという性格から、なごみではリズムクラブに所属し、ストリート系ダンスなどでメンバーと一緒に汗を流す。

 今月17日、同市のハートピアかごしまであった鹿児島大会の県陸上代表合同練習では、コーチのアドバイスを受け、真剣なまなざしで繰り返しフォームをチェックしていた。昼休みなどに自主練習も積んでいる。「腕を振って脚を遠くへ運ぶ」。走るときに心がけていることだ。

 今年10月の鹿児島大会では、昨年も出場し3位に終わった男女共通400メートルリレーと合わせた3冠を目標にする。

合同練習で甲突川沿いを走る有馬佳苗さん=鹿児島市
合同練習で甲突川沿いを走る有馬佳苗さん=鹿児島市