2023/08/16 14:00

ソフトボール×給食づくり=馬渡龍弥さん(22)■熱心、仕事の幅広げる 努力家、エースに成長

事業所で調理をする馬渡龍弥さん=鹿屋市今坂町
事業所で調理をする馬渡龍弥さん=鹿屋市今坂町
 新型コロナウイルスの影響で3年延期となった鹿児島国体と全国障害者スポーツ大会が10月、県内各地で開催される。仕事や学業に励みながら、あるいは障害を乗り越え、アマチュアスポーツの祭典を目指す選手たちの挑戦は続く。延期前に連載した「素顔の挑戦者」第2章-。



 細身の体がマウンドで躍動する。勢いで帽子が脱げることもある。全国障害者スポーツ大会・ソフトボール鹿児島チームのエースだ。「投げる球種はストレートだけだが、時々ボールがぶれて自然に変化する」。コーナーを狙う丁寧なピッチングを心掛けている。

 競技は、特別支援学校高等部のときに始めた。福祉施設を運営し、チームのコーチを務める篠原大志さん(47)が、馬渡さんの運動能力の高さを見込んで声を掛けた。2020年に開催予定だった障スポ鹿児島大会を見据えてチームづくりをしていたころだ。

 新型コロナウイルス禍で3年延期になった分、選手たちは力をつけた。当初三塁手で起用された馬渡さんも練習や試合を重ねる中で投手に転向、エースとなった。「とにかく体を動かすのが好き。ピッチャーは楽しい」と話す。泉大輔監督(41)は「足が速くセンスもいい。努力家でもあり、さらに成長できるはず」と期待を寄せる。

 7月まで鹿屋市内の給食センターに勤務、今月から篠原さんが運営する就労継続支援事業所で働く。施設や事業所向けの給食を作っており調理や食器の洗浄・消毒、料理を容器に詰める作業などを積極的にこなして仕事の幅を広げている。

 篠原さんは「ソフトを始めたころは内向的だったが、社会人として経験を積み精神的に成長した。プレーにも自信がうかがえる」と見守る。「試合を楽しみながら、エースとして勝ちにもこだわってチームを引っ張ってほしい」と泉監督。

 7月末、霧島市のグラウンドであったチーム練習。太陽が照りつける中、馬渡さんは仲間とともに投球や守備、バッティングの練習に黙々と取り組んだ。

 大会まで2カ月余。「制球やボールを離す位置などまだまだ課題がある」と、下半身強化や筋力アップのトレーニングを続ける。鹿児島大会はチームとしても初の全国大会だ。「一戦一戦しっかりと戦って勝ち進んでいきたい。そして優勝できれば。仲間を信じて挑んでいく」

ピッチングの練習をする馬渡龍弥さん=霧島市国分
ピッチングの練習をする馬渡龍弥さん=霧島市国分