第76回南日本文化賞(南日本新聞社主催)がきょう3団体に贈られる。
茶産地の育成、競技力向上と普及、伝統芸能の保存伝承-。各分野で工夫を重ね、地域に活力を与えてくれた。その取り組みに、心からの敬意と祝意を表したい。
南日本文化賞は開田事業家の野井倉甚兵衛、画家海老原喜之助ら5氏が表彰された1950年の第1回を皮切りに毎年11月に贈賞している。社会の模範となる「地の塩」として長年、郷土に功労のあった個人・団体を顕彰するのが目的である。
経済産業部門で受賞する鹿児島県茶生産協会(田原良二会長、鹿児島市)は茶の生産農家や製茶工場を持つ経営者らで72年に設立した。後発産地だった鹿児島の栽培技術向上、環境や食の安全への配慮、乗用型摘採機の導入による茶園の規模拡大を積極的に進めた。業界が一丸となった取り組みは2024年産荒茶生産量と、25年産一番茶の荒茶生産量で、静岡県を抜いて初めて全国1位となる原動力となった。
鹿児島は抹茶の原料となるてん茶の生産量や有機栽培茶の栽培面積も日本一。世界的な抹茶ブームや健康志向の動きを早くからつかみ、「稼ぐ力」向上への追い風とした。
学術教育部門の女子ハンドボールチーム・ブルーサクヤ鹿児島は1984年にソニー国分として創部した。堅守速攻を武器に2024~25シーズンのリーグH女子で初代女王に輝く。前身の日本リーグ時代から15年ぶり2度目の快挙で、40周年の節目を飾った。
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの実業団チーム。選手やOGが後進育成や地域貢献にも力を注いでおり、霧島市に立ち上げたジュニアチームには小学生約50人が所属する。卒団生の多くが地元の高校に進んで九州・全国大会で活躍するなど、ハンドボールが地域を代表する競技として根付いている点も功績といえる。
身の丈4.85メートルの弥五郎人形が街を練り歩く姿は観衆を圧倒する。数百年続くとされる岩川八幡神社(曽於市)の秋の例大祭の主役だ。今年3月、国の重要無形民俗文化財に指定された。
祭りを「曽於の宝」と位置づけ、開催と継承の中心的役割を果たしてきた弥五郎どん保存会(中迫勇会長)も学術教育部門での受賞となる。
人口減少や旧3町の合併で行政の形態が変わる中、岩川だけでなく曽於市全体の行事として伝承しようと、それまでの会を改編し2010年に設立された。4年に一度の衣替えで、着物の仕立てや竹組みの胴体制作など技術の継承にも努める。
人口減少は歯止めがかからず、人手不足は各方面に重くのしかかる。未来を見据え、地域に密着した取り組みは、課題解決への道筋も示してくれる。



