和の雰囲気を伝える毛筆フォント。多様にかき分けられるのは「字を絵として捉えるから」。元は看板職人。「街の看板が師匠」

2020/03/31 20:22
アニメ「鬼滅の刃」の作中、キャラクターを紹介する場面などに毛筆フォントが使用された綱紀栄泉さん。元は看板職人。「街の看板が師匠」と語る=2020年3月
アニメ「鬼滅の刃」の作中、キャラクターを紹介する場面などに毛筆フォントが使用された綱紀栄泉さん。元は看板職人。「街の看板が師匠」と語る=2020年3月
【かお】毛筆書体用に50万字を書いた綱紀栄泉(つなのり・えいせん)さん

 焼酎ラベルや時代劇の題字など、和の雰囲気を伝える毛筆フォント。制作、販売を手掛けるさつま町の「昭和書体」で、専属書家として84歳の今も筆を執る。楷書から寄席文字まで、64書体約50万字を書き分けてきた。「どれが自分の本当の字か分からない」と笑う。

 人気は大胆な筆の勢いやかすれが残る、力強い書体。サッカー日本代表の選手名入り公式タオルに採用されたほか、人気アニメ「鬼滅の刃」の作中、キャラクターを紹介する場面でも使われ、話題を呼んだ。

 元は看板職人。1960年ごろ、地元で開業した。若い頃は画家志望で手先は器用だったが、文字書きは独学。早朝、ちり紙と鉛筆を手に雑貨店などの看板をなぞって回ったという。「街の看板が師匠」と振り返る。

 15年前、転機が訪れる。長男の坂口茂樹さん(61)が「職人の毛筆文字を残そう」と、父の字を基にした書体作りに乗り出した。和文フォントでは1書体当たり7千字以上必要になる。多いときは1日100~200字を書き上げていった。

 看板業からフォント制作へ。茂樹さんが会長、その長男の太樹さん(35)が社長を務め、大手書体メーカーとも業務提携する。今は1日30~50字、自宅の作業机に向かって新たな65書体目に挑む。

 多様に書き分けられるのは「字を絵として捉えるから」という。「人も自分もほれぼれする字を書きたい」。最近スマートフォンを購入、字体の確認用にカメラを駆使する。本名・坂口綱紀(こうき)。

(2020年3月30日付南日本新聞)

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