嘱託警察犬の審査会で嗅覚を頼りに足跡をたどる犬=11日午後、鹿児島市桜島横山町
鹿児島県内で民間の警察犬(嘱託警察犬)の数が年々減っている。長年育ててきた指導手によると、担い手の高齢化に加え、近年の小型犬ブームも背景にあるとみている。迅速な初動捜査のためには県内各地で出番を待つ嘱託犬の役割は大きく、「活動に関心を持って」と呼びかけている。
県警鑑識課が鹿児島市で管理する直轄犬に対し、嘱託犬は指導手の自宅で暮らしながら訓練を受け、出動要請を待つ。事案の発生場所によっては嘱託犬の方が先に現場に到着するため、初動に一役買っている。
同課によると、2025年は10月末までに、直轄犬も含めた警察犬の出動回数は69回だった。嘱託犬は11回出動し、山中から行方不明者を発見した例もある。
懸念は嘱託犬の減少だ。毎年審査があり、任期は2年。20年度は26匹いたが、25年度は9匹になった。指導手も減少傾向にあり、今は61〜74歳の7人が担う。指導歴22年の鹿児島市吉野町、パート三尾野あけみさん(61)は嘱託犬が減る理由に指導手の高齢化を挙げつつ「近年は小型犬の人気が高く、それも影響しているのでは」と推察する。
鹿児島市桜島横山町の南栄リース桜島グラウンドで11日、26年度採用の嘱託犬を決める審査会があった。臨んだのはシェパードやラブラドルレトリバーなど12匹。嗅覚を頼りに遺留品を見つける「足跡追及」や、茂みに隠れた不明者を7分以内に探し出す「捜索救助」など3種目に挑んだ。
南さつま市の介護職員梶原大輔さん(31)は愛犬シエル(ボーダーコリー)と初参加。指導手は未経験だが「合格できれば、シエルの活発で好奇心旺盛な長所を生かし、地域の役に立ちたい」と挑戦を決めた。
指導手になるために必要な資格はないが、犬の特性を学び、訓練場所を確保しなければならない。審査を想定し、リードを外して走らせたり、不明者役を務める第三者を確保したり、訓練を積むハードルはある。
自宅にドッグランを持つ三尾野さんは「街中の公園では犬を放せない。時間や環境の余裕が求められるのは確か」と認める。その上で「犬の成長を間近で感じられ、地域貢献できる誇り高い仕事。専門性にハードルを感じる人は多いかもしれないが、普段の遊びの一歩先だと思ってチャレンジしてほしい」と話した。