| お答えします |
木部 暢子(きべ・のぶこ)さん
鹿児島大学法文学部教授 |
−良くないものを口から外へ−
宗一郎くんも気がついているように、「つく」にはいろいろな使い方があります。「手をつく」「ひざをつく」「おしりをつく」は、手やひざやおしりを床やかべに押しつけて、体を支えることです。「しりもちをつく」は、うっかり転んでおしりを地面につけてしまうことです。この場合もおしりで体を支えているわけです。
「しりもちをつく」はそれだけでなく、「もちをつく」ということばと関係しています。「もちをつく」は、きねを臼(うす)に押しつけて、もち米からもちを作ることです。この「もちをつく」と「しりをつく」がいっしょになって、「しりもちをつく」と言うようになったのです。
ここまでで、「つく」には「何かを何かに押しつける」という意味があることがわかります。しかし、宗一郎くんの質問にある「うそをつく」の「つく」は、このような意味とちょっと違っています。
じつは「つく」にはこのほかに、「ため息をつく」「へどをつく」のような使い方があります。「ため息」は困ったときに出る息のこと、「へど」はいちど飲みこんだ食べ物のことです。このように「つく」には、良くないもの、きたないものを口から体の外へ押し出すという意味もあるのです。「うそ」は体の中にある良くないものです。したがって「うそ」を口から外へ押し出すことを「うそをつく」と言うようになったのです。
ところで、かごしま方言では「うそをつく」ことを「うそをひる」と言います。この「ひる」も「へをひる(おならをする)」「くそをひる(うんちをする)」のように、「きたないものを体の外へ押し出す」という意味をもっています。ただし、おならやうんちは口からではなくおしりから出します。鹿児島では「うそ」はおしりから出るのですね。 |