昭和100年に合わせ、「鹿児島の近現代」教育研究センターが企画したトークイベント=15日、鹿児島市の天文館図書館
鹿児島大学法文学部付属「鹿児島の近現代」教育研究センターが開設して、間もなく3年を迎える。西南戦争以降の歴史研究が手薄な鹿児島で、埋もれつつある資料の発掘・収集を進め、データベース化に取り組む。地域貢献を意識し、市民を巻き込んだ研究やイベントの充実にも力を入れる。
15日、鹿児島市の天文館図書館。祝日の利用客でにぎわう中、鹿大の教員2人が、与論島民の移住の歴史に関する研究成果を発表した。参加者からも質問や感想が上がった。
センターが昭和100年に合わせて企画したトークイベントで、誰でも気軽に参加して対話できるスタイルにこだわる。本年度は戦争や文学といった多様なテーマで計7回を予定。これとは別にシンポジウムなども企画している。
◆所蔵物検索
センターは2022年10月に開設された。背景には、鹿児島の近現代研究が進んでおらず、歴史資料の廃棄が進むことへの危機感があった。日本近現代史や社会学を専門とする特任教員ら6人を新たに雇用し、客員教員・研究員も増やしてきた。
保管スペースをつくり、鹿児島の古地図や郷土雑誌、日記などを保存し、データベース化。ホームページから、所蔵物を検索できるようにした。今後、功績を残した郷土の人物を検索できる人名辞典も準備を進めている。地域住民らによる歴史資料の保存や、「見える化」も支援していく。
◆もう一つの柱
センターのもう一つの柱が、地域貢献を目的とした「地域マネジメント教育研究推進事業」だ。分野横断的な研究を後押しするため、学内の教員チームからプロジェクトを募り、毎年十数件を採択して予算を助成している。
これまでに、奄美民謡の継承、肝属川流域の水資源保全、伝統野菜の維持・保存、戦争遺跡調査といった事業が成果を上げている。地元自治体や高校生らが参加する研究もある。
少子化や人口減で地域社会が縮小する中、新たな文化系センターの立ち上げは珍しいという。丹羽謙治センター長(62)は「しっかり存続させていくためにも基礎を固め、県内外に発信して認知度も高めていきたい。鹿児島の近現代に光を当て、頼りにされる存在になりたい」と抱負を述べた。