沖縄の数え歌を口ずさむ日高政行さん=三島村黒島
鹿児島県三島村黒島に、三線や唄を愛する元気な100歳が暮らしている。大里地区の日高政行さん。戸籍上の生まれは1925(大正14)年9月だが「一つ上の姉の出生届が遅れた影響で、私の届けも1年先延ばしになった。本当は101歳」と笑みを浮かべる。今月1日の大里八朔踊りでは、地唄手(じうてぇ)として自慢ののどを披露した。
妻・豊子さん(92)、長女・富士子さん(73)と3人暮らし。食事はもちろん着替えやトイレも手助けは必要ない。近くに住む息子たちを含め、耳は家族のだれよりも達者だ。
戦時中は旧日本陸軍の2等兵として沖縄に向かう予定だったが、戦況が変わり徳之島に駐留した。島は大規模な空襲を受けた後で、防空壕(ごう)の穴掘りと壕が崩れないように木を切って補強することが主な仕事。合間に速射砲の訓練もあり、「射撃がうまい」と言われてうれしかったことを覚えている。
島にはハブが多く、捕獲が得意だった日高さんに、よく声がかかった。木の棒でハブを押さえつけ、爪で首をつまみ切る。皮を剥いで火であぶり、皆で食べたことを昨日のことのように思い出す。
旧海軍串良基地から出撃し、黒島に不時着した元特攻隊員の江名武彦さん(東京都出身)とは、戦後親しく交流したそうで今も懐かしむ。
大里地区出身。牛の生産農家で村議を4期、島にある黒尾大明神社の宮司も務めた。求められれば「朕(ちん)惟(おも)うに 我(わ)が皇祖皇宗 国を肇(はじ)むること宏遠(こうえん)に-」と教育勅語を暗唱し、三線を弾きながら数え歌など口ずさむ。
好物は刺し身、肉、黒砂糖。「自分のペースで寝て起きている。子や孫、ひ孫ら家族の顔を見ることが一番の楽しみ。長生きの秘訣(ひけつ)かな」と穏やかに話した。