パスピエと七尾旅人の異色2マンライブ ラストはスペシャルセッションも 写真:佐藤広理
ロックバンド・パスピエが主催する対バンライブ『パスピエpresents「印象I」』が8日、東京・LIQUIDROOMにて行われた。過去にもそうそうたるゲストアーティストを招き、シリーズ化してきた対バンライブ。約2年ぶりに開催された同公演では、シンガー・ソングライターの七尾旅人を迎え、観客とともに特別な一夜を作り上げた。
【ライブ写真】アツいステージ!パスピエのメンバーソロショット
パスピエと七尾の出会いは、2014年3月に東京・新木場STUDIO COASTで開催されたイベント『alternative tokyo』。そこで見た七尾のライブにパスピエのメンバーが衝撃を受け、「いつか自分たちのイベントにお誘いしたい」という思いを抱いていたという。それから11年以上が経ち、ついに両者の対バンが実現した。
先にステージへ登場したのは七尾。「パスピエのメンバーから心のこもった手紙が届き、感銘を受けた」「ギターの三澤勝洸くん、ベースの露崎義邦くんとは同じ音楽学校の出身。僕は3日で辞めちゃったけど」といったトークのあと、10代の頃、雑居ビルの隣の部屋に住んでいた女性をモデルにした「ストリッパーのおねえさん」をアコギの弾き語りで披露。さらにトレイシー・チャップマンの「Fast Car」の日本語詞カバー、東京から故郷の高知までドライブしたときのことを歌にした「Alone In My Car」、そして「パスピエさんの曲をいろいろ聴いて、この曲、歌詞がすごいんだよね」という言葉から「夕焼けは命の海」をカバーするなど多彩な楽曲を披露した。
最後は代表曲「サーカスナイト」。トラックを流しながら立ち上がって歌い始めた七尾は、「お客さんの雰囲気がいいので、こっちにします」とギターを手に取り、弾き語りスタイルに。楽曲の背景を紐解く、ていねいなMCを含め、アコギの弾き語りの豊かな可能性をじっくりと体感できるアクトだった。
そしてパスピエのステージへ。オープニングは、成田ハネダ(キーボード)の鍵盤から始まり、組曲的な展開が繰り広げられる「恐るべき真実」。さらに9月にリリースされた新曲「しあわせの気配」のドラマティックな旋律、サウンドが響きわたり、オーディエンスを惹きつける。「贅沢ないいわけ」では高揚感あふれるビートと「じれったい このじれったい/気持ちの行方はどうすりゃいいの」という歌詞が響き合い、早くも最初のピークを迎えた。
「旅人さんの声は天国みたいだなって、ご本人にも伝えました(笑)。旅人さん、そして、みなさんとここで出会えたことがうれしいです」という大胡田なつき(ボーカル)のMCを挟み、最新アルバム『カリギュラ』収録曲から「トゥパリタ」を披露。さらに七尾の楽曲「DAVID BOWIE ON THE MOON」をカバー。浮遊感と壮大さをあわせ持ったバンドサウンド、ホーリーな雰囲気のボーカルによって大らかな感動が生まれた。
ライブ初披露となる「新擬態」からライブは後半が始まり、新曲「煩悩ゴーウェスト」や、パスピエ流のディスコチューン「バジリコ」「MATATABISTEP」で盛り上げ、大胡田の「次の曲は長いことやってるんですけど、今日のためにちょっとアレンジしてきました。これからもいろいろな形で曲を届けていきます」という言葉から本編の最後の「ONE」へ。鍵盤と歌で始まるアレンジによって、メロディと歌詞の魅力をしっかりと伝えた。
アンコールでは、七尾の代表曲「Rollin' Rollin'」をカバー。七尾もステージに登場し、この日限りの貴重なセッションが実現した。そして、ラストを飾ったのは、パスピエの曲で唯一“七”が付く曲という「七色の少年」。爽やかで切ない歌が響きわたり、盛大な拍手とともにイベントはエンディングを迎えた。