
身体の芯まで温まる指宿の「砂むし温泉」
砂むし温泉の歴史は古く、ポルトガル人による1547年刊行の「日本報告」が最も古い文献資料として残る。高度経済成長期に広まった新婚旅行や高齢化による健康ブームと、時代ごとにその珍しさと健康への期待から注目を浴びてきた。
湯気の上がる波打ち際
山で湧く源泉が海へと向かい、海水と交わる境界で湧き出す自然現象を利用した、世界的にも希少な砂むし温泉。波打ち際で砂むし温泉ができるのは、天気の良い大潮干潮の時だけ。月平均7日程度で、チャンスは1日2時間ほど。

世界的にも希少な波打ち際の砂むし温泉
掘るほどに熱い50℃を超える砂を、人肌に心地良い適温に調整しながらかけるのが“砂かけさん”の仕事だ。「入浴時間は10分を目安に、我慢比べはしないで」と呼びかける。
スコップで砂を掘ると湯気があがる
「好みを見極めながら、説明したり、熱めの砂をかけたりと工夫している」と話すのは、砂楽で砂かけ歴5年になる今村諄さん。「地元の指宿を盛り上げたい」。熱い思いを胸に、観光の最前線で活躍する。
「体力勝負の仕事。一日1,000人以上訪れることもある」。自分専用のスコップを相棒に、サクッ、サクッと砂をすくい、あっという間に体を包み込むきれいな砂山を築いた。
砂かけの直前
砂かけの最中
管理部の濱村一樹さんは、「若い砂かけさんが増えて頼もしい。まずは裸足で砂場を歩くことに慣れ、先輩について学び、人形相手の練習を経て一人前になっていく」とうれしそうに語った。
体に乗せる砂は約20kg。程よい圧に温かさ、聞こえる波音で心も体もデトックス。「熱いときは少し背中を持ち上げて、冷たい砂を入れてみて」と濱村さんはアドバイスする。空気の冷たい冬場は、砂から出た時の爽快感がたまらない。
海岸沿いに作られた、砂むし升の小屋
砂むし会館 砂楽