社説

[太陽光パネル]再資源化図る制度急務

2025年10月26日 付

 使用済み太陽光パネルのリサイクル制度の整備が難航している。政府が製造業者らへの義務化を検討した法案が、練り直しを迫られているためだ。

 2030年代後半以降には大量のパネルが寿命を迎えると見込まれる。このままでは大量廃棄に対応できず、環境に悪影響を及ぼす恐れがある。

 太陽光発電は地球温暖化対策に役立つ再生可能エネルギーの主力だ。資源の有効利用や処分場の延命、環境破壊を防ぐためにも確実にリサイクルできる法制度構築を急がねばならない。

 太陽光発電は、再エネでつくる電気を電力会社が固定価格で買い取る制度(FIT)が12年に始まり急拡大した。制度開始以降の導入は、23年3月時点で265万3000件に上る。

 しかし買い取り期間の20年を超えると、収入が減る多くの発電事業者が撤退する可能性がある。パネルの寿命も重なり、30年代後半の廃棄量は年間50万トン程度に膨れ上がる推計だ。現状ではリサイクルは任意のため、多くがコストの安い埋め立てに回ると想定される。その場合の環境への負荷は大きい。

 そこで環境、経済産業両省は、製造業者と輸入業者に再資源化の費用負担を求める方式でリサイクルの義務付けを検討した。ところが、自動車や家電は所有者が負担している点と整合性が取れないと内閣法制局から指摘され頓挫した。循環型社会の実現にはメーカー側の一定の負担・関与が必要なだけに残念だ。

 代替策としてリサイクルを発電事業者の努力義務とするなどの制度導入を検討しているが、実効性は不透明だ。再エネの拡大が阻害されかねず、政府には義務化の方策を引き続き探ってほしい。再資源化促進にはコストの引き下げが不可欠で、技術開発を加速させる支援も求めたい。

 大規模太陽光発電(メガソーラー)を巡っては、北海道・釧路湿原周辺など各地で生態系や景観の悪化、土砂災害への懸念から摩擦が生じている。不法投棄や放置が増えてパネルが破損し、鉛などの有害物質が流れ出す恐れもある。対策を盛り込んだ条例は全国約330自治体(地方自治研究機構集計)でつくられ、その数は増加中だ。

 2月に閣議決定したエネルギー基本計画は、再エネを最大電源と位置付ける。電源全体に占める割合を現在の2割程度から40年度には4~5割程度に拡大させる。同時決定した地球温暖化対策計画は、温室効果ガス削減目標を「35年度に13年度比60%減、40年度に同73%減」としている。

 再エネ拡大が想定通り進まなければ、温暖化対策も実現しない。政府は開発規制に前向きな姿勢を示しており、目標達成との両立を図ってもらいたい。業者にも地域の理解を得ながら共生を図る努力が求められる。

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