海洋堂造形師・古田悟郎さん作のフィギュアを自然の中で撮影。生きているようなリアルさがある((C)古田悟郎)
■サラリーマン化石ハンター・宇都宮聡さん
獅子島の海岸で発見した棒状の化石は、鹿児島県で初めて発見された、翼竜(よくりゅう)の化石でした。クビナガリュウと翼竜がほぼ同じ年代の地層で見つかった事例としては、東アジアでは最古です。
翼竜は中生代を通して生息していた、空飛ぶ爬虫類(はちゅうるい)の仲間。脊椎(せきつい)動物の中では、初めて空を自由自在に飛ぶことができたグループです。現在、鳥が空を飛んでいるように、この時代は翼竜が、優れた飛翔(ひしょう)能力で大空を支配していました。すご腕のハンターであり、頂点捕食者だったのです。
翼竜の翼は、前肢(ぜんし)とそこから異様に長く伸びた第4指(薬指にあたる指)と脇腹あたりの間に飛膜を張ったもの。羽根で構成される鳥類の翼とはつくりが異なります。体を軽くするために骨はとても薄く、骨の内部は空洞でした。
獅子島で発見した骨化石は、まさに薄く空洞のある構造でした。翼竜の中には翼を広げた時の長さ(翼開長)が10メートルを超えたと考えられる巨大な仲間もいました。この翼竜はどのぐらいの大きさだったのでしょうか。
化石を前肢の骨と仮定して、同じ白亜紀前期に南米などに生息していた「アンハングエラ」という翼竜を基準に比較しました。すると、翼開長は約4~5メートルと推測できました。太古の鹿児島では、モンスターが上空を飛翔していたのです。
翼竜化石の発見をマスコミ発表するに当たり、復元フィギュアの作成を、友人の古田悟郎さんにお願いしました。世界屈指の造形集団として知られる海洋堂(大阪府門真市)の造形師です。アンハングエラをベースに、生きているようなリアルな造形に仕上げていただきました。
【プロフィル】うつのみや・さとし 1969年愛媛県生まれ。大阪府在住。会社勤めをしながら転勤先で恐竜や大型爬虫類の化石を次々発掘、“伝説のサラリーマン化石ハンター”の異名を取る。長島町獅子島ではクビナガリュウ(サツマウツノミヤリュウ)や翼竜(薩摩翼竜)、草食恐竜の化石を発見。2020年11月には化石の密集層「ボーンベッド」を発見した。著書に「クビナガリュウ発見!」など。
(連載「じつは恐竜王国!鹿児島県」より)