ラジオ体操に励む児童ら=29日、鹿児島市東坂元2丁目
夏休みの定番だったラジオ体操に変化の波が押し寄せている。鹿児島県内では新型コロナウイルス下に、集まっての開催を中止する地域が広がった結果、今年も再開を見送ったり、短縮したりする動きが相次ぐ。背景には、共働きが増えた保護者の負担軽減があるようだ。
「ラジオ体操は各ご家庭にて実施を」。鹿児島市の原良城西町内会あいご部は、今夏の中止を決定し、文書で理解を呼びかけた。コロナ下に各家庭での実施が定着し、集合して行う意義が薄れていることなどを理由としている。保護者から再開を希望する声は出なかったという。
夏休みの日中、児童クラブに子どもを預ける30代の母親は「給食がないので毎朝弁当を作る必要があり、正直、ラジオ体操はない方が助かる」と明かす。
薩摩川内市のある自治会も、中止を求める保護者が多く、見送りを決めた。コロナの再流行を心配する声のほか、協力する高齢者クラブから熱中症への懸念も寄せられ、実施を望む意見は出なかったという。2020年の夏から中止が続いており、昨年は日数を絞って開いたものの、再び取りやめることになった。
短縮の動きも広がる。鹿児島市の辻ケ丘町内会は、7月末から8月初旬の5日間だけ実施する。昨夏は不審者情報の影響で中止した。あいご会長の櫨木麻衣さん(49)は「老若男女が触れ合える機会はなくしたくない。子の安全や親の負担も考慮しながら、できる範囲で続けたい」と話す。
九つのあいご会を束ねる伊敷校区あいご会連絡協議会の鶴田利一会長(72)は、日数を減らしたり、開始時刻を遅らせたりする地域が、コロナ前から徐々に増えていた印象を持つ。出欠カードを印鑑で埋めるのが楽しみだった子ども時代を懐かしみつつ「残していくには、手だてを考えなければならない時期に来ている。時代に合った形を、地域のみんなで考えることが大切ではないか」と訴えた。