辺塚だいだいの加工品開発に力点。協力隊卒業後も「辺塚に残る」|南大隅町地域おこし協力隊

2024/10/08 10:00
南大隅町地域おこし協力隊:福元信一郎 さん
南大隅町地域おこし協力隊:福元信一郎 さん
 鹿児島市の中心部からフェリーで大隅半島に渡り、車を南に走らせる。曲がりくねった山道の先に出てきたのは、南大隅町の旧辺塚小学校だ。出発から約3時間。福元さんはここ辺塚地区で、2021年9月から地域おこし協力隊として活動する。ミッションは、辺塚校区公民館のサポートや体験イベント企画のほか、同町と肝付町にある辺塚地区固有のかんきつ「辺塚だいだい」の栽培・販売・加工品開発など幅広い。「ポリシーは“他者本位”。関わる人の本音を大事にしたい」。根っからの明るさと笑顔で、新しい風を吹かせる。

■経験が今をつくる
 辺塚を案内し始めると、自然や神社、陸上自衛隊佐多射撃場などを慣れた口調で紹介する。「地元の人たちに山のこと、農作業などを一つ一つ教わった。初めて来てくれた人には、辺塚の美しい自然を思いっきり体験してほしい」と力強く語る。

 大学在学中、飲食店でアルバイトをした。接客が好きだったが、次第に料理に夢中になり、卒業後の1995年、乳製品を学ぶため北海道調理師専門学校へ進学。調理師免許を取得し、2002年春に鹿児島へ戻って飲食店で経験を積んだ。3年後、32歳で独立。鹿児島市内で洋食レストランを8年営んだが、体調を崩して店を閉じた。「飲食業は体力勝負。自分も周りも顧みず、無我夢中だった」と振り返る。

■辺塚で生きていく
 趣味でカヤックと自転車を始めた19年6月、辺塚を訪れた。旧辺塚小近くの「みなとはら食堂」に立ち寄った際、衝撃が走った。客が積極的に店の手伝いをしていたからだ。「店とお客さんの立場が平等で距離が近い。こんな店をつくりたい」と思った。

 21年5月、辺塚での協力隊募集を知り、手を挙げた。「選んでもらえてうれしかった。50歳目前のチャレンジ」とにこり。今、最も力を入れるのが辺塚だいだいの加工品開発だ。「酸味と苦みが強く、生食・加工ともに難しい」が、3年かけて時季ごとの味わいの違いを学び、ドレッシングやシロップなどの試作品を考案した。任期は来年8月まで。「何とか加工品の販売までこぎつけたい」と目を輝かせる。

 協力隊卒業後も、辺塚に残るつもりだ。「辺塚に生かしてもらっていることに感謝している。今度は辺塚に恩返ししたい」と未来を見つめる。

■今後の目標
 地域おこし協力隊退任後、南大隅町に住み、起業することです。

■今これに夢中です
「辺塚(南大隅町)」
 自然、探索・辺塚への受け入れ、体験・資格取得など“辺塚満載”の日々を過ごしています。

― ◆ ―

■福元信一郎 さん
 1972年鹿児島市生まれ。91年に鹿児島玉龍高校卒業後、鹿児島経済大学(現鹿児島国際大学)、95年に北海道調理師専門学校へ進学し、調理師免許を取得。飲食店で経験を積み、2005年から鹿児島市内で8年間レストランを経営。阪神大震災と東日本大震災の際は現地でボランティア活動に出向いた。2021年9月から南大隅町地域おこし協力隊として活動する。

フェリア601号(2024/10/05)

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