新入生を祝う鹿児島大の入学式=4月、鹿児島市の県体育館
東京大学が2025年度の学部入学者から、年間授業料を約10万円引き上げる決定をしたことを受け、地方国立大の動向が注目されている。鹿児島県内の鹿児島大、鹿屋体育大は、いずれも値上げについて「検討していない」としている。ただ、運営費交付金の減額、物価や光熱費の高騰などで台所事情は厳しく、国の支援を求めている。
授業料に対する考えを9月中旬、両大学に取材し、文書で回答を得た。
鹿大は、国立大としての役割について「さまざまな領域で教育の機会均等を保障し、優秀な人材を育成することで国全体の発展に貢献することだ」と指摘。授業料の値上げではなく「国の責任として、運営費交付金の増額などによる支援とするべきだ」と訴えた。
鹿屋体大も「財源確保は、国立大全体の課題。今後の運営費交付金や授業料標準額の検討の動向を注視している」と説明した。両大学とも、今後値上げを検討する可能性については「現時点で未定」という。
国が大学に支給する運営費交付金は、国立大にとって収入の柱だ。しかし、鹿大、鹿屋体大いずれも、この20年で約1割減った。授業料も、文部科学省令で定める「標準額」が05年度に1万5000円上がって53万5800円となったのに基づき、標準額のまま据え置く。
各大学の判断で2割まで増額できるが、学部の授業料を引き上げたのは全国に86ある国立大のうち、首都圏の6大学にとどまる。
共同通信の調べでは、昨春の都道府県別大学進学率は、東京が男子77.6%、女子76.5%に対し、鹿児島は男子45.3%、女子37.7%にとどまる。
鹿大は、都市部と地方の経済格差を踏まえ「値上げには賛同できない」と強調。「地方圏の国立大が値上げをすると、地方在住者が教育を機会均等に受ける権利を奪いかねない。地方の大学進学率の著しい低下にもつながることが予見される」と懸念を示した。
■運営費交付金 2004年の国立大法人化で、国が大学の規模に応じて配分する仕組みが導入された。教育研究や経営改革の成果を踏まえた傾斜配分もある。少子化や国の財政難などを理由に縮小が続き、24年度は総額1兆784億円で、04年度に比べて13%減った。国立大学協会は6月、国立大を取り巻く財務状況の悪化を踏まえ「もう限界です」と訴えた。