親と暮らせない子どもの委託率、目標に遠く及ばない23%…道半ばの里親制度、鹿児島は17%と全国平均を下回る

2024/10/17 17:00
 経済的理由や虐待など、さまざまな事情で親と暮らせない子どもを家庭に受け入れて養育する里親制度。10月はその周知を図る「里親月間」だ。国は2016年から施設に優先して里親などへの委託を進めるが、全国の委託率は2割程度と道半ばだ。鹿児島県内は全国を下回る状況が続いている。

 里親は児童福祉法に基づき、養育を児童相談所から委託される。養子縁組をしない養育里親は1家族につき4人まで受け入れられ、09年度からは一定の条件を満たした里親や施設職員が自らの家庭に迎え入れ5~6人を養育するファミリーホームも事業化された。全国の21年度の委託率は23.5%。目標とする乳幼児75%以上、学齢期以降で50%以上にはまだ遠い。

 県内では23年度末で259世帯が里親登録、ファミリーホームは9カ所ある。家庭に代わる養育が必要な20歳未満の子どもは666人。そのうち里親61世帯に82人、ファミリーホームに31人が暮らす。委託率は17.0%だ。県は国が児童福祉施設として位置づける「里親支援センター」を本年度開設する予定で、里親の育成やステップアップに力を入れていく考えだ。

◇ファミリーホームは「感情を出せる場所」

 里親らはどんな思いで子どもたちに向き合っているのか。鹿児島市でファミリーホームを運営する冨永正輝さん(58)が8日、同市の鹿児島大学で講演した。

 市内の児童養護施設で23年間児童指導員として働いた冨永さんは2014年、学生や高齢者など多様な人が暮らす賃貸住宅「ナガヤタワー」に「冨永さんち」を開いた。現在は妻と5人の子どもを受け入れ、補助員2人と見守って育てる。

 委託される子の中には虐待を受けた経験がある子もいる。存在自体を否定されて自己肯定感が低く、笑ったり泣いたりといった感情もあまり出さない。そんな子どもたちが住人らと触れ合い、「日々プラスの言葉をかけてもらい、心が元気になっていく」と冨永さん。「反抗したり、わがままを言ったりするようになると大変だが、感情を出せる場所になれたという喜びは大きい」と明かす。

 冨永さんは県内の委託率が低い現状に触れ、「実親は里親に子どもを取られてしまうと考え、施設を希望する。発達障害があったり非行をしたりする子どもは、専門職がいる施設の方が預けやすいという面もある。『どんな子でも預かる』という里親も少ない」と指摘。委託を進めるには、里親や児童相談所のケースワーカーのスキルアップが欠かせないという。「児相の専門職を増やすことや里親に必要な支援について、これからも行政などに働きかけていきたい」と語った。

 講演会はNPO法人鹿児島子どもの虐待予防協会が主催した。聴講した同大医学部医学科5年の秋葉裕貴さんは「里親の喜びや葛藤などさまざまな心情に触れた。制度を充実させていくには、周りの支援と理解も不可欠と感じた」と話した。

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