ホーリーバジル(浜田季之氏提供)
鹿児島大大学院理工学研究科の浜田季之准教授(56)=天然物有機化学=らの研究グループは、県産のシソ科薬用植物ホーリーバジルに含まれる化合物が、新型コロナウイルスの増殖を抑制することを突き止めた。新たな治療薬の開発に役立つと期待される。11月下旬、日本生薬学会の英文誌オンライン版に掲載された。
今回、ホーリーバジルから分離した化合物スルホキノボシルジアシルグリセロール(SQDG)が、コロナウイルスの増殖に重要な酵素の働きを強力に阻害することを発見した。培養細胞を使った実験でもコロナウイルス感染を抑えることが確認でき、非感染細胞への毒性もみられなかった。
SQDG自体は一般的な光合成植物にも含まれており、ホーリーバジルを食べることで感染予防や治療ができるわけではないという。既存のコロナ治療薬で使われている化合物とは異なる化学構造を持ち、これまでとは違う作用メカニズムで効くことが期待される。
ホーリーバジルはアジア、オーストラリアなどの熱帯が原産。今回の研究で使ったものは、ボタニカルファクトリー(南大隅町)の農場で栽培された。
浜田准教授によると、既存のコロナ治療薬は副作用などの課題が残る。新たな変異株出現による感染爆発に備え、特効薬の開発が急がれているという。「天然資源の中には、人間の想像を超える化学構造や機能を持ち、医薬品の元となり得る化合物候補がある」と強調。植物に加え、海洋生物の調査も進めていくとしている。