閉学 あすは我が身…元学長は憂う「二年制に固執したら未来はない」 待ったなし県立短大改革 県内私立四大との競合ネックか

2025/01/31 18:03
鹿児島県立短期大学=鹿児島市下伊敷1丁目
鹿児島県立短期大学=鹿児島市下伊敷1丁目
 学生募集に苦戦する鹿児島県立短期大(鹿児島市)の活性化に向け、県が設置した有識者による検討委員会は、2月にも提言書をまとめる。「四年制化は前提としない」という県の意向をくみながら進んだ議論。かつて改革を訴えた元学長は、どう見ているのか。2010~15年度に学長を務めた種村完司さん(78)に課題や理想像を聞いた。(連載「県短大活性化~元学長の提言」㊤から)

 -県短の現状をどう見ているか。

 「受験者減の勢いに驚いている。1部(昼間)は2017年の510人から、24年は362人まで減った。女性の四年制大志向が急激に強まっている現状を直視すべきだ。国公立大志望の若者が近隣県に流出しており、本当にもったいない。学長時代、県内の高校関係者と会えば『四年制化はまだですか?』と必ず聞かれた。鹿児島純心女子短期大が26年度以降の募集停止を決めたのも、いかに短大が苦しいかを示している」

 -四年制化の議論は長年繰り返されてきたが、実現していない。

 「一番のネックは県内私立大との競合だろう。私立側は、県短が四年制になれば『パイ(学生)を奪われる』と懸念している。ある私大の経営陣から直接『四年制化はやめてくださいね』と言われたこともある。県は、本当に競合するかどうか調査し、すみ分けの道筋を探るべきだ」

 -他の要因は。

 「初期投資が必要となるため、県財政を圧迫する恐れがある。県から出向してきた職員に『県にはお金がない』と、よく言われた。短大から四年制化した公立大の中には、既存施設を活用して経費を抑えた例があり、調査・研究すべきだ。長年実現しないことで、学内には疲弊感や無力感もある。14年に県短の教員に行った意向調査では、3分の2が『短大のままではよくない』と考えていた。一方で四年制となれば、より研究成果や業績が問われるので後ろ向きな人もいた」

 -県は、四年制化した場合、若者の県内定着に悪影響が出ると懸念している。

 「県外から学生が来てくれれば喜ばしいこと。企業と連携するなど、県内に就職して定着してもらう努力が必要だ」

 -県に求めることは。

 「すぐに全学科を四年制化するのが難しいならば、食物栄養専攻だけでも早急に管理栄養士の受験資格が得られる道を開いてほしい。短大では栄養士の資格しか取れず、優秀な学生がとても苦労している」

 「学長在任中、設置者である県に定期的な意見交換の場を求め、当時の副知事や総務部長に四年制化の要求を続けたが、まともに受け止めてもらえなかった。遅まきながら検討委が設置されたので注目しているが、短大のままでという方針に固執するなら、必ずや時代に取り残される。必要なのは、鹿児島の高等教育政策の在り方など、未来志向の幅広く公正な議論だ」



 たねむら・かんじ 1946年名古屋市生まれ。京都大大学院文学研究科博士課程単位取得。社会学博士(一橋大)。77年から鹿児島大教育学部で教壇に立つ。鹿大副学長などを経て、2010年から6年間、県立短大学長を務めた。鹿児島市。

鹿児島のニュース(最新15件) >

日間ランキング >