タブレット端末を使ったテストはいいことずくめ? 結果が早く分かる、先生の負担も減る…通信環境に課題残るが「それでも利点ある」と専門家も評価

2025/02/09 18:03
タブレット端末を使って実施される鹿児島県学力・学習状況調査=1月16日、鹿児島市の天保山中学校
タブレット端末を使って実施される鹿児島県学力・学習状況調査=1月16日、鹿児島市の天保山中学校
 鹿児島県教育委員会は2024年度から、県独自の学力調査を学習用端末で出題・解答する新方式(CBT)に切り替えた。採点も一部自動化されるため、教員の負担軽減につながるだけでなく、児童生徒は結果を早く知ることで学習に生かしやすくなる。通信障害が発生するなど課題も残ったが、専門家は「それでも利点は多い」と評価する。

 調査は23年度までと同様、小学5年(国語、算数、社会、理科)と中学1、2年(英語を加えた5教科)を対象に、1月14~24日に行われた。

■業務から解放

 現場の教員からは、CBT移行を好意的に受け止める声が上がる。鹿児島市内の中学校に勤務する40代女性教諭は昨年まで、調査結果の採点やデータの入力に2週間ほど要していた。

 判断に悩む答えを同僚とすり合わせたり、設問ごとに解答状況を入力したりする負担は決して小さくなかった。CBTで解放され、「それなりに時間を費やしていた作業がなくなったのは大きい」と感じている。

 戸惑う声もある。志布志市の伊崎田小学校の大山昭二校長(55)は、児童が端末の操作やタイピングに慣れているかが影響すると感じた。実力を出し切れるように準備してきたが、初日は児童から「紙の方がいい」という意見も出たという。

 しかし文部科学省は、全国学力・学習状況調査を段階的にCBTへ移行することを決めており、25年度は中学理科で実施する。大山校長は「移行前に体験できたのはありがたい」と前向きだ。

■つながりにくく

 調査中に通信障害が起きるなど課題も残った。昨年11月、各校で児童生徒がCBTの操作を練習する時間を設けて予行演習を実施。本番はアクセスの集中を避けるため、調査期間を2週間に設定した。

 ところが、調査に参加した664校のうち483校が1月16日に実施した。同日午前11時から午後1時にかけてCBTの委託業者のサーバーにアクセスが集中。つながりにくくなった結果、一部の端末で、設問の画面が更新できなくなるなどの支障が出た。

 県教委によると、障害が生じた児童生徒がいたのは341校。各校の調査予定日を事前確認し、業者がサーバーの容量を増やすなど対策を取っていたが、それでもアクセス数が上回ったという。

 「来年度以降は円滑に実施できるよう、業者とより連携を取って対策を講じたい」と義務教育課の水島淳課長は話す。アクセスの集中を避けるため、学年ごとに実施日を分けるなども今後の検討課題となる。

■教育の質向上

 鹿児島国際大の辻慎一郎准教授(61)は校長を務めた姶良市の帖佐中学校で22年から、英語など一部教科の定期テストをCBTで行った。「生徒に結果を早く返せるようになり、記憶が新しいうちに間違いを学び直すことで学力向上につながった」と振り返る。

 県の試みについて、辻准教授は「採点集計などが自動化され、教員は調査結果を指導にどう生かすかに注力できる。ICT(情報通信技術)を活用して業務を減らしながら教育の質を向上させる、働き方改革の好例になる」と期待を寄せた。

 ■CBT ComputerBasedTestingの略。紙の冊子を用いた筆記方式の調査に対し、コンピューターを利用して出題・解答する。導入することにより、児童生徒の解答データの蓄積が容易になるだけでなく、拡大文字やルビ振りなど、特別な配慮が必要な子どもにも対応しやすいといった利点が見込める。独自の学力・学習状況調査を実施している自治体のうち、埼玉県や山口県、京都府がCBTで実施している。

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