福祉タクシーで学校に向かう柿内瑛斗さんに手を振る母親の祥子さん=1月20日、鹿児島市
鹿児島県教育委員会は2024年度、医療的ケア児(医ケア児)の通学支援モデル事業を始めた。家族の負担軽減が目的で、保護者の送迎で特別支援学校に通う児童生徒が対象。登下校に福祉タクシーなどを利用する際、同乗する看護師の費用を県が週3回程度負担する。県教委は27年度以降に県全体に広げる計画だが、タクシーや看護師の確保といった課題もある。
「えいちゃん、いってらっしゃい」。1月20日の午後、鹿児島市の柿内祥子さん(46)は自宅前から、福祉タクシーで鹿児島特別支援学校に登校する息子の瑛斗さんを見送った。
小学2年の瑛斗さんは日常的にたん吸引や人工呼吸器が必要で、普段は教員が自宅や施設に出向く「訪問教育」を受ける。月1回ほど登校して行事や授業に参加する「スクーリング」があり、これまで両親のどちらかが付き添っていた。
今回は鹿児島市の訪問看護の補助事業と組み合わせ、スクーリング中も看護師がケアを担った。瑛斗さんは約2時間後に帰宅。祥子さんは「親と子が離れて過ごす時間はどちらにとっても大切。大きな一歩になった」と話す。
県教委特別支援教育課によると、通学支援の対象となる県内の児童生徒は123人(24年11月時点)。うち93人が通学生、30人は訪問教育を受ける。初年度となる24年度は鹿児島特支(鹿児島市)と鹿屋特支(鹿屋市)の2校で昨年10月~1月に実施し、8人が利用した。
福祉タクシーや看護師は保護者が手配するが、「確保が難しい」との声が聞かれる。瑛斗さんに付き添った訪問看護師(41)は「医ケア児と関わる看護師が増えれば支援もしやすくなる」と話す。福祉タクシーの数自体も限られている。
訪問教育ではさらに課題がある。学校看護師は、通学する医ケア児の数やケア内容に応じて配置される。訪問教育の児童生徒は対象外になるため、スクーリング中はケアをする人が付き添う必要がある。保護者がその役割を担うケースがほとんどだ。
事業を使った鹿屋特支小学部4年生の母親(42)は看護師と同乗した。「自分も体調面に不安があり、狭い車内でケアをする負担が減り助かった」としつつ、「通学支援のみだと付き添う家族の都合で欠席しないといけないことがある」と打ち明ける。志布志市から通う中学部1年の母親(49)もスクーリングに付き添った。「学校にいる間も看護師がケアできたら助かる」と明かす。