鹿屋市のパートナーシップ宣誓書受領書
鹿児島県内の自治体で性的少数者(LGBTQ)らのカップル関係を公的に認める「パートナーシップ制度」の導入が全国と比べ遅れている。現在採用している7市に加え、来年度中に3市町が取り入れるなど徐々に浸透するが、人口カバー率は56.5%にとどまり全国で6番目に低い。性的少数者らの権利拡充を目指す支援者は「どの自治体にも当事者はいる」と導入の必要性を訴える。
県内では2021年の指宿を皮切りに、鹿児島、日置、志布志、出水、鹿屋、南さつまの7市が取り入れた。2月6日までに県内では少なくとも26組が宣誓している。来年度中に薩摩川内市、いちき串木野市、屋久島町が制度を設ける予定。
制度は15年に東京都渋谷区と世田谷区で始まり、全国に普及した。南日本新聞の取材によると、今年2月5日時点で東京都、新潟県、佐賀県など1都1府30県の人口カバー率(24年住民基本台帳を元に算出)が100%に達している。全国の人口カバー率は90.8%となっている。都道府県単位で導入するケースも増えているが、鹿児島県は「先進事例を調べている段階」としている。
人口カバー率が低いのは沖縄29.0%、長崎40.6%、宮城50.3%、愛媛53.7%、熊本55.3%、鹿児島56.5%など。沖縄県は「25年3月までに県単位で制度を取り入れる」と公表している。
具体的に導入の検討に至っていない鹿児島県内の自治体は30市町村に上る。ある自治体の担当者は「制度を必要とする声が行政にまで届いておらず動きづらい」と明かした。
同性婚を巡る九州訴訟弁護団共同代表の森あい弁護士(阿蘇法律事務所)は「パートナーシップに法的拘束力はないものの、行政が存在を認めることが当事者を力づけることになる」と意義を強調する。導入当初と比べ話題に上がることが減り、当事者に情報が届かなかったり、周囲の理解が追い付かなかったりしていると指摘。「当事者はいないのではなく見えづらいだけ。共に生きる仲間として関心を持ってほしい」と話した。