新総合体育館建設予定地のドルフィンポート跡地。現在はサーカス会場となっている=1月10日(本社チャーター機から)
鹿児島港本港区のドルフィンポート跡地に新総合体育館建設を計画する鹿児島県は、最大313億円としていた事業費を500億円近くに増額する見込みだ。大きく膨らむ金額に「県民感覚とかけ離れている」「優先すべき事業が他にあるのでは」など県民から疑問の声が上がっている。
「物価高で県民の生活が苦しい中、500億円かけて体育館を造る必要があるのか。私たちの感覚とかけ離れている」。幼児2人を子育て中の薩摩川内市の主婦(40)は首をかしげる。自身の食事量を節約することもあるとし、「物価高対策や子育て支援に多くの予算を投じて」と要望する。
県は、計画が全国大会を開催できる必要最小限の規模で、規模や機能の見直しは「基本的に困難」としている。鹿児島市の会社員、大工道治さん(55)は「少子化で体育館を使う人は減るはず。50~60年後を考えると、規模を小さくしていい」と指摘。財政面も心配し「コスト高の影響の大きさは分かるが、決めた予算内で工夫すべきだ」と話す。
一方、鹿児島市商店街連盟など4団体は6日、塩田康一知事に建設推進の要望書を提出した。同連盟の有馬勝正会長(81)は「天文館など中心市街地のにぎわいが減っている。活性化のため規模や機能を変えずに整備してほしい」と語る。
鹿児島中央高校2年の川原悠之真さんは卓球部で年に数回、県体育館を利用する。「古くて使いにくい部分もある。今後建て替えは必要なので、いま造ってもらえたら」と期待する。
県は現在の体育館と県武道館の敷地(いずれも県有地)を売却して新体育館事業に充当することを検討している。新体育館計画の見直しを求める市民グループの兒玉百合香代表(46)は「500億円に値する県全体が潤うような体育館が本当にできるのか。敷地は県民の大事な資産。売却益は他の優先すべき事業に使ってほしい」と訴えた。
県議会は昨年3月、基本構想から68億円増額した関連議案を可決している。「2度目の増額はあり得ない」「県議は県民感覚を持って、議論に臨んでほしい」と議会の動きに注目する県民の声もあった。県は14日、県議に入札不調を受けた後の方針について説明する。