〈川内原発差し止め認めず〉法廷の原告は「ため息」、「恥知らず」と響く声 原告団長「やめないということが一番」 国の原発回帰、鮮明に

2025/02/22 06:30
判決後に会見する弁護団の森雅美弁護士(右)ら=21日午後、鹿児島市山下町
判決後に会見する弁護団の森雅美弁護士(右)ら=21日午後、鹿児島市山下町
 「福島の事故を忘れたのか」-。鹿児島地裁が、九州電力川内原発(薩摩川内市)の運転差し止めを認めない判断を下した21日、集まった原告からは怒りや落胆の声が上がった。提訴から約13年。国は原発を最大限活用する政策にかじを切った。東京電力福島第1原発事故が起きた福島県の出身者は「原発によって古里が奪われた」と訴えた。

 裁判長が判決文を読み上げ始めると、法廷の原告からはため息が漏れた。さまざまな角度から原発の危険性を訴えてきた原告の主張はことごとく門前払いされた。閉廷後、退席する裁判長らに向けて「恥知らず」という叫び声が響いた。

 原告の1人、熊本県水俣市の胎児性水俣病患者の女性(70)は「今も福島の人は犠牲になり続けている。なぜそこに目を向けないのか」と疑問視した。日常生活に車いすが欠かせず、出水市に外出することも多い。川内原発で事故が起これば「死を覚悟するしかない。命を軽んじた判決だ」

 地裁から出てきた原告団長の森永明子さん(53)らは納得しない表情で「不当判決」「私達は屈しない」と書かれた紙を掲げた。森永さんは「鹿児島から画期的な判決が出ればと思っていたが、残念。心を折らずに続けていくことが相手にとっては嫌なこと。やめないということが一番かなと思っている」と自分に言い聞かせるように話した。

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 判決後に鹿児島県弁護士会館であった集会でも批判が相次いだ。

 森雅美弁護団共同代表(72)は「肩透かしの判決。福島の事故を受けて起こしてはいけないという反省があったはずなのに、事故前に戻ってしまった」と落胆した。

 「不誠実としかいいようがない。原子力規制委員会の判断に任せて逃げており、安全性に対して誰も責任を負っていない」と憤るのは元原発設計技術者の後藤政志さん(75)。重大事故が起きるリスクとその発生頻度を勘案して判断すべきだとし、「南海トラフ地震など自然災害のリスクが高まる中、事故はいつ起きてもおかしくない状況だ」と強調した。

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 今回の運転差し止め訴訟の原点は、14年前に起きた東日本大震災での福島第1原発事故による原発に対する不信感だ。全国でも同様の訴訟は続いている。

 同原発が立地する福島県双葉町出身で霧島市に住む男性(70)は、判決をニュースで知った。1月に地元を訪れた際、子どもの頃の記憶に残る町並みは復興工事によって様変わりしていた。「原発事故が一度起こると、古里はなくなるのが現実だ」と嘆いた。

 一方、国は原発回帰を鮮明にする。男性は「今回の判決は国の流れをくんだのだろう。福島の原発事故はこのまま過去の話になってしまうのではないか」とつぶやいた。

(連載「門前払いの衝撃~川内原発停止認めず」㊤より)

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