「ウクライナの自由と平和を信じたい」と話すルドルフ・ヴィクトリアさん=23日、鹿児島市の南日本新聞会館
ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始してから24日で3年がたつ。トランプ米大統領就任後、米ロはウクライナの意向を重視しないまま戦争終結へ向けた交渉を始めるなど、和平への道筋に暗雲が立ちこめている。鹿児島県内の避難者は「権力による交渉の先に本当の平和はない」と訴える。
2022年3月、ウクライナ東部ドニプロから鹿児島市に避難してきたルドルフ・ヴィクトリアさん(51)は「トランプ氏は力による現状変更を進めようとしている。世界から正義が消えつつあるのが本当に悔しい」と言葉を詰まらせる。
トランプ氏はウクライナ大統領のゼレンスキー氏を「選挙を経ていない独裁者」と批判。「協議にウクライナは必要ない」「(ロシアと合意しなければ)国はなくなる」など、要求と非難を加速させている。ルドルフさんは「ウクライナは民意で政治を決めてきた自由を愛する国。ゼレンスキー大統領を独裁者と糾弾するのは間違いだ」と憤る。
母方の祖母も父方の祖母も過去の戦争で亡くなった。母方の祖母からは「絶対に戦争はしてはいけない」と言い聞かされて育った。戦争が始まった3年前、破壊された町を目の当たりにしたとき、「祖母の話と現実が重なり、怖くて仕方がなかった」と振り返る。
約1年前から鹿児島市の児童クラブに勤めている。親族や友人とは引き裂かれたままで、「ふさぎ込みそうになった時、子どもと過ごす時間に癒やされている。母国の子どもたちも戦争のない環境で育ってほしかった」と涙をにじませた。
仮に米ロ主導で“終結”したとしても「一時的なものに過ぎず、大きな反発を生むだけだ」と強調する。「平和に関する国際的な合意を踏みにじる行為を許してはいけない。世界中のみんなが自分にできる方法で平和を目指し、少なくとも良心を見失わない自身でいることが大切だ」と力を込める。