〈詳報〉大崎事件 再審認めず、最高裁が特別抗告を棄却 裁判官1人は「再審開始すべき」、初の反対意見付ける

2025/02/26 22:13
会見中に涙を浮かべる鴨志田祐美弁護士(右から2人目)ら=26日、東京・霞が関の司法記者クラブ
会見中に涙を浮かべる鴨志田祐美弁護士(右から2人目)ら=26日、東京・霞が関の司法記者クラブ
 1979年に鹿児島県大崎町で男性の変死体が見つかった「大崎事件」で、殺人と死体遺棄の罪で満期服役した原口アヤ子さん(97)の親族が裁判のやり直しを求めた第4次再審請求について、最高裁第3小法廷(石兼公博裁判長)は26日までに「(弁護団の新証拠には)証明力に限界がある。有罪認定に合理的疑いを生ずる余地はない」として、原口さん側の特別抗告を棄却した。再審開始を認めない判断が確定した。裁判官5人中4人の多数意見で、1人は「再審開始決定すべきだ」との反対意見を付けた。大崎事件の再審請求で反対意見が付いたのは初めて。

 決定は25日付。特別抗告に対し「単なる法令違反、事実誤認の主張であり、抗告理由に当たらない」とした。弁護団は26日に東京と鹿児島市でそれぞれ会見を開いた。今後、第5次請求するかどうか検討する。

 弁護側は死亡時期に焦点を当て、遺体の解剖時の写真を基にした救命救急医の鑑定結果などを新証拠とした。自転車ごと側溝に転落し、男性の頸椎(けいつい)に過伸展が生じ、その後の不適切な救護によって死に至ったと訴えていた。

 石兼裁判長は鑑定について「死体を直接検分せず、写真の限定的情報から推論を重ねて結論を導いたもので、証明力には限界がある」と指摘。遺体は腐敗が進んでおり、解剖時に得られた情報が少なかったとして「死因の一つの可能性を指摘するにとどまる」と判断した。共犯とされた親族の自白や共謀の目撃証言に関しては「相互に支え合っており、信用性は相応に強固」と結論付けた。

 一方で、宇賀克也裁判官は、新証拠の鑑定は専門的知見に基づき高い信用性がある上、共犯とされる親族の自白内容や近隣住民などの供述内容が変遷していることを踏まえ、「新旧全証拠の総合評価を行う必要がある」との見解を示した。

 結論として、「事実認定の正当性についての合理的疑いが生じざるを得ない」と述べ「特別抗告を認め、再審開始決定を行うべきだ」と示した。

 大崎事件の再審請求はこれまで、第1次で鹿児島地裁、第3次で地裁と福岡高裁宮崎支部が開始決定を出したが、いずれも上級審が覆した。第4次は地裁と高裁支部が再審を認めず、弁護側が特別抗告していた。

 確定判決によると、79年10月、道路脇の側溝付近で倒れている原口さんの義弟が発見され、近隣住民2人が自宅に運んだ。その後、原口さんら親族3人が首をタオルで絞めて殺害、おいを加えた4人で牛小屋に遺棄したと認定された。原口さんは一貫して否認し、3人の自白が有罪を支える。

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