どうなる? 鹿児島市のサッカースタジアム サンロイヤルホテル跡地含む候補地選定に横たわる課題 計上92万円、当初予算案にもにじむ事業停滞

2025/03/02 07:00
県議、鹿児島市議向けに開かれたサッカースタジアム整備の勉強会=1月31日、同市のホテル
県議、鹿児島市議向けに開かれたサッカースタジアム整備の勉強会=1月31日、同市のホテル
 鹿児島市が整備を目指す多機能複合型サッカースタジアムの候補地選定が停滞している。鹿児島港本港区北ふ頭を断念したのが昨年2月。移転を希望する鹿児島サンロイヤルホテル(与次郎1丁目)の跡地が新候補地に浮上する一方で、同ホテル跡の確保が見通せず、具体的な動きは進んでいないのが実態だ。

 「なるべく早く選定したいが、ホテル移転の動向などの事情もある。選定は状況が一定整理された段階だろう」。2月25日の市議会代表質問で、下鶴隆央市長はこう答えた。

 同ホテルを運営する鹿児島国際観光は2024年8月、県有地の住吉町15番街区への移転希望を表明。県と市はこれを受けて、中心市街地に近い立地や周辺を含めて一定の敷地があることから、「候補地になり得る」との認識を示した。ただ、周辺地権者との用地交渉や土地取得費用などの課題があるとした。

 同街区を所有する県は同年9月、バンケット(祝宴・宴会)機能付きホテルなどでの活用方針を決定。整備する事業者は、公平性の観点から公募する。市職員の一人は「公募だと事業者の決定に一定の時間がかかる。サンロイヤルの土地が空くと決まらない限り、地権者との交渉には移れない」と明かす。

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 市は同ホテル以外にも「可能性がある土地」の情報を広く収集している。毎月1回程度、県と事務レベルで協議。市は整備予定地を決める前にホテルを含む複数の候補地を挙げ、配置図や概算整備費を示し、市議会に議論してもらう考えだ。ただ具体的なスケジュールや、外部委員会を設置するかなどの選定手法はまだ決まっていない。

 25年度の市当初予算案にもスタジアム検討事業の停滞ぶりが現れた。予算を計上したのは過去最少の92万円。内訳は、Jリーグや国と協議が必要になった場合の交通費のみ。候補地のめどが付いてから予算執行するよう求めた24年度の市議会の付帯決議も踏まえた。

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 「新スタジアムの早期実現をお願いしたい」。25年1月末、サッカーなどの競技3団体は、新スタジアム整備の機運維持を目的に勉強会を開いた。県議と市議35人に、白波スタジアム(県立鴨池陸上競技場)では他競技との日程調整が難しい点など理解を求めた。

 終了後、県サッカー協会は「候補地も決まっていない段階で、(経済団体や企業への接触など)われわれが動くことはできない」とスタジアム計画の進展を求めた。

 北ふ頭を断念したのは早期整備を目指すためとしていた下鶴市長。ただ、早く造れるかは「候補地を絞り込む際に考慮される要素だ」と述べ、新候補地同士の比較で評価するとした。

 市議会からは候補地を急いで決めるより、整備の確実性を優先すべきだとの声も上がる。

 スタジアム整備に関する市議会特別委員会の前委員長である古江尚子議員(自民)は、丁寧な合意形成の上で候補地を選定するよう注文する。ただ、場所に関わらず費用負担の話は避けられないとして、「シビアに現実を見て議論を進める必要がある」と課題は山積していると指摘した。

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