既存メディア 遠いジェンダー平等 色濃く残る男女の役割意識…35歳以上は8割男性、識者は「バランス欠く報道」を危ぶむ

2025/03/10 20:33
 国際女性デーに合わせ、南日本新聞社が九州・沖縄の新聞社と鹿児島県の民放テレビ局計14社に社員の男女比などを尋ねたところ、20~34歳は女性が半数程度を占め、男女数の均衡が取れていた。35歳以上は女性の割合が大幅に減り、男性が8割以上を占める。(連載「メディア平等ですか?~当事者としてジェンダー格差の現状㊤」)

 国学院大学の水無田気流(みなした・きりう)教授(ジェンダー論)は「記事の出稿権限を握るデスクや管理職に女性が少ないと、女性にとって切実な課題が見落とされたり、無意識の偏見によるジェンダー的配慮に欠ける表現が生まれたりしやすい」と指摘。「年齢層が上がるほど男性が多い組織構造は紙面や番組の内容に影響を与えかねない」と警鐘を鳴らす。

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 県内外の新聞社やテレビ局で働く現場の記者らからは切実な声が上がる。県外のテレビ局の20代女性は「生理の企画を提案すると男性のデスクから嫌な顔をされ、取材後も他のデスクに見てもらうようたらい回しにされた」と明かす。他にも女性を取り巻く問題を取材した際「伝えたいこととは違う記事になった」と思った経験もあるという。

 「事件などの分野は男性、文化や生活などは女性が担当しがち」。全国紙の20代男性は「担当記者の属性に多様性が欠けることで、記事にならず埋もれてきた課題があるのでは」と話す。

 県内テレビ局の20代女性は番組の締めをベテランの男性に任せるのが通例となっていることに違和感を抱く。「女性は補佐的な役割という固定観念を視聴者にすり込みかねない」

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 長い間、長時間労働が当たり前とされたメディア業界。各社で働き方改革が進められるが、ワークライフバランスに悩む女性は少なくない。県内の30代女性は「記者を目指す時点で適齢期の結婚・出産は諦めていた」。ある女性アナウンサーも「子育てとの両立に苦しみ辞めた先輩もいた。ロールモデルがおらず将来を思い描けない」と打ち明ける。

 厚生労働省によると、女性活躍の推進に取り組む企業を国が認定する「えるぼし」を取得しているのは九州・沖縄の新聞、民放テレビ主要35社のうち、熊本放送(RKK)1社のみ。子育てサポートに取り組む「くるみん」の認定は西日本新聞社など5社だった。

 子育てをしながら記者職を続ける女性は「仕事が好きな一心で続けてこられたが、家庭を犠牲にして働いているように後輩に見えるのではないか。やりがいを持っている人が長く働けるよう、スピード感を持って変わってほしい」と訴えた。

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