「中間業者がボロもうけするだけ。末端は…」 コメの高値続いても潤い届かず、嘆く鹿児島の農家

2025/03/11 14:56
鹿児島パールライスは調達に苦戦し、納品を制限せざるを得ない状況だ=2月下旬、鹿児島市の同社
鹿児島パールライスは調達に苦戦し、納品を制限せざるを得ない状況だ=2月下旬、鹿児島市の同社
 全国的な品薄を受け、鹿児島県内でもコメの高値が続いている。流通の改善を図り業者間で高騰するコメの取引価格を落ち着かせようと、農林水産省は初めて政府備蓄米の放出に踏み切った。一方、米価が上がったことで2025年産は主食用米の増産が予想され、飼料用の稲や醸造などに使われる加工用米へのしわ寄せも懸念されている。

 10日、備蓄米放出に向けた初回15万トンの入札が始まった。対象は年間玄米5000トン以上を仕入れる業者。JA鹿児島県経済連は各地のJAと共に全国農業協同組合連合会(JA全農)に一括で落札してもらう。JA県経済連の担当者は「どう配分されるかは全く分からない。店頭の価格がどうなるかも予想ができない」。

 全国では24年産主食用米の収穫量は前年産に比べ18万トン増えたが、大手業者の集荷量は今年1月末時点で前年同期比で23万トン減った。これらは、一層の値上がりを期待した中間業者の出し渋りなどにより通常の流通ルートから外れて“消えた”とされる。

 県内大手の米穀卸販売・鹿児島パールライス(鹿児島市)では、24年産は調達率が例年の6割弱にとどまる。「県内産の収量が悪く、県外産も調達しているがなかなか集まらない」と担当者は明かす。

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 鹿児島はもともとコメ供給量が需要を下回る「移入県」だ。24年産は猛暑や台風の影響で主食用の収穫量が7万3300トンと前年より3300トン少なく、加えて全国的な集荷競争の激化にさらされている。

 コメの出荷業者と卸売業者が売買する際の価格を示す「相対取引価格」は上昇し、24年産の出回りから1月までの鹿児島のコシヒカリは、玄米60キロ当たり平均2万1140円で前年比44%高。農水省がまとめた全国スーパーのコメ平均価格も、3月2日までの1週間で5キロ3952円(前週比13円高)、前年同期に比べ94.6%値上がりした。

 エーコープかごしま(同市)は県内Aコープ全店で5キロ入り県産米を3500円ほどで販売する。昨年9、10月に値上げし、今の価格は1年前と比べ倍近い。今年に入ってからは品薄により各店舗へ分配する数量を制限し、県産米の販売は水曜日に限定した。

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 消費者の関心事は高騰した価格の行方だが、生産現場の思いは複雑だ。伊佐市で30ヘクタール作付けする男性(49)は「中間業者がボロもうけするだけで、末端の農家は大して潤っていない」とため息をつく。24年産は生産者からの買い上げ単価の目安となるJA県経済連の「概算金」が普通期米で前年の約2倍(玄米60キロ当たり約2万6000円)になったが、「やっと適正価格に戻った印象。遅すぎるくらい」という。

 ここ数年、肥料や資材など生産コストは上昇の一途をたどる。同市の中山間地で40ヘクタール作付けする男性(75)も「肥料は昔からすれば3~4割上がった。農機もトラクターで1台1000万円、コンバインも2000万円近くなった上に、もって7年くらい」と話す。

 体力のない高齢農家は離農し、後継者もいない。規模は拡大傾向にあるが人手不足で管理が行き届かず、特に中山間地域ではイノシシやシカの被害も深刻という。「このままでは5年もすれば農業ができなくなる。せめて高すぎず、安すぎない価格で安定してくれれば安心して米を作れるし、消費者も安心していい米を食べられる」

(フォローアップ経済「消えたコメ」㊤から)

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